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Daily News Presented by Variety Japan

2010年7月24日

現在・未来・過去――ひとつの映像から想像を広げて紡ぎ上げた『未来の記録』

「正解はひとつではない」と岸建太朗監督

 SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2010長編部門(国際コンペティション)、最初の日本映画上映作品となった『未来の記録』。


 小さな学校を開こうと、田舎の古い一軒家に住み始めた治と幸。そこには机や椅子、人形芝居の人形、ノートなど、たくさんのものが残されていた。不思議な既視感を覚えつつ、学校の未来を想像する2人だったが……。『未来の記録』は、現在と未来、過去が交錯しつつ、ひとつの大きなドラマが紡ぎ出されていく作品だ。撮影には3年間かかっているといい、上映後に出演者らとステージに上がった岸健太朗監督は、「自分の映画を見てこんなに泣いていいんでしょうか。大きなスクリーンで見て、いろんな思いが湧きあがってきました」と語った。


 出演者の杉浦千鶴子をして「久しぶりに見たわかりにくい映画」と言わしめた作品だが、映画をどうとらえるかについて監督は「正解はひとつではない」と言う。「構成は入り組んでいますが、時間は過去・現在・未来というふうに流れているだけではないんじゃないか、裏側に時空を超えたものがあるんじゃないかと思うんです。現在と過去のシーンでは時間の流れ方が違うので、キャメラのフォーマット自体を変えて、時間に触れる感じを出せればいいと考えていました」。


 もともとは、短編のアイデアからスタートしたのだという。「最初は、踏切に飛び込んだ女性が両手を広げて電車を受け止めるのを見たという話を聞いて、彼女が旅立つ前に思ったことや過去を想像しながら短編を作ろうとしたんです。上村聡とあんじの2人に踏切に向かって歩く演技をしてもらって、その時の上村君の演技を見てさらに彼の過去を想像したくなった。そのうちにスタッフだった鈴木宏侑が勝手にフレームに入ってきて演技してもらうことになったりして(笑)。普通の映画作りとは逆に、ひとつの映像から想像していって芋づる式に今のような1本の作品になったんです」。「撮影開始から1年半経ったころ、やっぱり父親役を出したくなったと言われて」参加した町田水城のような俳優もいる。


 3年間の撮影では、「監督がハードを蹴ってせっかく撮影したものを消してしまった」「渾身の演技だったのにRECボタンが押されていなかった」「監督がスタッフと大喧嘩して大泣きして撮影が半日潰れた」「1本の映画になるとは思っていなかった」などなど、出演陣から様々な証言が飛び出したが、「監督は人たらしだから」と杉浦が言うように、監督を中心に「泣いて笑って怒りながら」(あんじ)出演者とスタッフ全員で作り上げていったのだろう雰囲気が、舞台上に並んだ彼らからも感じられた。


 『未来の記憶』の次回上映は28日(水)11時30分から。作品詳細と監督プロフィールはこちら

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