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Daily News Presented by Variety Japan

2010年7月25日

30歳前後の男女のリアルな日常と喪失感を描く『seesaw』

「シーソーは、反対側に人がいなければ上がらない」と完山京洪監督

 SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2010の3日め、日曜の朝11時からの上映にもかかわらず、210席の多目的ホールはおよそ9割の入り。長編部門(国際コンペティション)への参加作品『seesaw』の観客だった。

 Q&Aに立ったのは、完山京洪監督、主演の真琴役の村上真希、プロデューサー兼撮影の西田瑞樹の3人。ただし、客席にはメインキャストのSoRA、岡慶悟、ほかのスタッフも来場しており、キャスト、スタッフのこの映画への思いが伝わってくるようだった。

 「自主映画を作り続けて10年以上。やっとこのような場で上映していただくことがかない、興奮しています」と完山監督。

 仲間の婚約を機に、同棲する恋人・真琴(村上)との結婚を意識し始めた伸司(完山)。だが、仕事で新しい一歩を踏み出したばかりの真琴は、そんな伸司の単純さも含めて、その気になれない。そんなとき、真琴に妊娠の兆候が現れる……。テーマは喪失感。もとは短編であった同作品を、気に入ってくれた西田プロデューサーとともに、長編として作り直したのだそう。完山は、知り合ったばかりの村上にあて書きし、脚本を書いたという。

 「シナリオにはト書きしかなく、俳優が即興を繰り返すなかでできてきたものをスタッフが書きとめ、それをもとに撮影を行いました」。特に村上とSoRAがウェディング・ドレスを試着するシーンは、実際にレンタルショップで試着するのと同じく、3時間という制限時間のなかで、即興撮影を行ったのだそう。

 「村上さんの演技が素晴らしくて、僕はそれを切り取るだけで、すごくいい画が撮れました」と話すのは撮影を手がけた西田プロデューサー。村上の演技は、身近に実在する女性のように感じられ、リアルだ。話し方、気の遣い方、恋人との距離の取り方など、アラサ―と称される真琴世代の女性なら、さらに高い共感を得られるのではないか。俳優の演出を丁寧に行ったことが垣間見える。

 それゆえか会場から、「泣くシーンではなにに泣けたのか? 後悔という意味か?」という、俳優になのか、役の真琴になのか、曖昧な質問が出た。

 それに対し、「自分本位であったことに。寂しさと同じくらい後悔の気持ちは強かった」と役の人物として答えた村上。

 この確固たる答えっぷりに、皆で作り上げたというこの作品のチームワークの見たような気がした。「シーソーは、反対側に人がいなければ上がらない。2人いて初めて楽しむことができる」と完山監督のいうシーソーは、多くの仲間によって、この上ない均衡を作り上げた。

 『seesaw』の次回上映は、29日(木)17時から映像ホールにて。作品情報と監督プロフィールはこちら

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