2010年7月26日
中国北部で実際に起きた事件を題材にした『透析』(原題)
「10年前の中国の状況を思い出して欲しい」とリウ・ジエ監督
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2010の4日目、2本目に上映されたコンペティション部門出品作品は、97年に中国北部で実際に起こった出来事を題材にした『透析』(原題)。
盗難車によるひき逃げ事故で娘を亡くしたばかりの裁判所判事ティエンは、担当した裁判で、車2台を盗んだ男に刑法通り死刑を言い渡した。腎臓移植を望む裕福な社長リーは、男に刑が執行された際、臓器を提供させようと画策する。しかし法律が改正され、男の刑が軽減される可能性が出てきた……。
丁々発止の審理のやり取りではなく、わずかなセリフと静謐な映像で緊迫したドラマを紡ぎ上げたリウ・シエ監督が、映画上映後のQ&Aセッションで、作品に込めた思いを語った。
「90年代後半、実際に3組の人々に起こった事件を映画ではひとつにまとめました。中国はどんどん変わっており、憲法も改正されています。10年前にこんなことがあったなんて人々は忘れているどころか、今知ったら驚くでしょう」。
確かに、当時3万元以上の窃盗は死刑と金額が定められていたことも驚きだが、制定後、貨幣価値が10分の1に下がってもその裁定基準は同じだったいうのもショッキングだ。
「10年前の状況を思い出して欲しくてこの映画を作りました。同時に、自分も10年後に現在を振り返って驚くかもしれないという視点も持ちたい」。
ジエ監督はもともと「北京の自転車」(01)などを手がけた撮影監督。本作では、日本人撮影監督の大塚瀧治の名が撮影にクレジットされている。
「私の以前の作品は全てフィルムで、今回初めてデジタルで撮影しました。日本のカメラと設備を使うこともあって、北京でテレビ番組を作っていた彼に頼んだのです。デジタルを理解する助けや、メーカーと直接わたりあえる人が必要でした。実際、技術面の問題なども随分解決してくれました」。
『透析』の次回上映は7月31日(土)17時から映像ホールにて。作品紹介と監督プロフィールはこちら。