2010年7月28日
第二次大戦末期の悲劇を少女の目を通して描く『やがて来たる者』(原題)
「今も世界中で同じ過ちが繰り返されていることを訴えたい」とプロデューサーのシモーネ・バキーニ
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2010の5日目。コンペティション出品作のイタリア映画『やがて来たる者』(原題)が上映された。
1943年。イタリアの山間の貧しい農村に大家族と共に暮らす少女マルティーナは、数年前に生まれたばかりの弟が死んで以来、誰とも口をきかなくなった。母親は再び妊娠するが、村には侵攻してきたナチスの影が忍び寄り、パルチザンの戦いが次第に激しくなっていく……。
第二次大戦末期に実際に起こった虐殺事件をもとに、少女の視線から戦争の一面を描いた衝撃的な作品だ。本作のプロデューサー、シモーネ・バキーニが、上映後のQ&Aで、今この事件を映画化する意義などについて語った。
「大戦末期、イタリアとドイツの同盟はムッソリーニ率いる小国だけで維持されており、その他の地域はドイツ軍の圧政に苦しんでいました。映画は当時のボローニャ近郊の特定の事件を描いていますが、史実を伝えると同時に、今でも世界中で殺戮が行われており、一般市民が犠牲になっていることを訴えたかったのです」。
美しい村で繰り広げられる凄惨なシーンには胸を衝かれるばかり。そしてその一部始終を目撃してしまう少女の、言葉を発しない演技が圧倒的。
「子役は全員プロの俳優ではありません。なかでも主役のマルティーナは言葉を失った少女。400人くらいオーディションして、喋らずに感情を表現でき、顔立ちも個性的だった彼女を選びました。大人の俳優にも負けない演技をしてくれたと思います」。
タイトルの『やがて来たる者』の意味を問われると、「ひとつは、生まれてくる少女の弟を指しています。また、現在も世界中で同じ過ち、いや過ち以上のものを繰り返している“やがて来たる者たち”、私たちのことも指しているのです」と語った。
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