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【デイリーニュース】 vol.05 『短編②』 Q&A

『時ノカケラ』『母との旅』『ネクタイと壁』


左から『ネクタイと壁』の山本亜希監督、『母との旅』で若返った母を演じた遠藤恭葉さんと中泉裕矢監督、『時ノカケラ』の大西礼芳さんと真壁幸紀監督

 

 『短編②』の上映には、家族や友人といった身近な人々とのコミュニケーションや絆をファンタスティックな映像を交えて描き出す3本が揃った。失われてしまった絆を取り戻そうと記憶をたどる旅に出る主人公たち。あの時、もしかしたら……という想いを抱く主人公たちに自分を重ねながら見てしまう、かもしれない。

 

 『時ノカケラ』の登場人物はタイムカプセルを開けるために集まった小学校の同級生たち。久しぶりの再開に沸く同級生の中に健斗の姿がないことに気づくアサミ。健斗がタイムカプセルに入れていたのは片腕の取れた土偶。アサミは健斗が土偶の折れた片腕をくれたことを思い出すのだが……。

 

 「この企画は、“くっつく”とか“絆”というテーマで何かやりたいねとプロデューサーと話していて、僕がいつかSFをやってみたかったことと、国際映画祭に応募するなら日本的なモチーフがいいのではないかと考えて、出て来たのが土偶というアイデアだったんです」と真壁監督。足利市の応援を得て3日で撮影したそうだが、捨てた片腕を探すアサミが迷い込む「コンビニ土偶」などユニークなアイデアが光る。「撮影には地元のコンビニを借りました。たくさん土偶を作りまして、棚の商品をどかして土偶を置いて撮影したんです」。物語の中心が夜の学校という設定なので撮影は深夜にまで及びハードだった様子。それでも「短編は監督の個性を表現できるところがいいですね」と意欲を見せる真壁監督だった。

 

 父を亡くし、母は認知症を患い、仕事を失って、妻からは離婚を迫られている良多。ふと目覚めると台所に立つ見知らぬ若い女が。それは若返った母の姿だった。母は父母の故郷・鹿沼への旅に良多を誘う、というファンタスティックな作品が『母との旅』。

 

 「母への想いを何か形にできないかなというのが企画のきっかけです。ちょうど鹿沼市が鹿沼を舞台にした映画の企画を募集してまして、僕らがこの企画のために探していた“日本の原風景”が鹿沼にはあることが調べてみたらわかったんです」。出演者は中泉監督の知り合いなどから集めたが、唯一大事なところで登場する農家のおばさん役だけは地元の方に演じていただいたという。「母親への想いというのは多くの人が共感できるものではないかと思うので、それが観る方に届けばいいなと思います」。会場からの「母親は若返らなくてもよかったんじゃないか」という質問には、「あの位の歳(20歳代前半)まで若返らせると、息子が母に恋心をいだけるかもな、と思いまして。いや、マザコンってことでなく(笑)。設定自体、若返った母というのが大前提だったので」との答え。「短編って、いろんな要素が入ってくる長編よりも想いが伝えやすいのではないかと思います」と短編への思いを語っていた。

 

 フランスで学んだ山本監督がフランスのスタッフ・キャストとともにフランス語で作り上げた作品が『ネクタイと壁』。毎朝儀式のようにネクタイを選び、結ぶ父をみて育ったヤン。父母が離婚し、母と暮らすヤンは父の部屋にいくたび壁に絵を描き自分の世界を作っていく。そして年月が流れ、突然父は亡くなり、ヤンは壁の絵と向き合いながら父の人生と自分との関係に思いを馳せる。

 

 「スペインの短編小説が原作です。とても短い2編を自由に脚色して作りました。私はこれまでも家族をテーマに作品を作って来たので、この2編がともに父と息子の関係を描いているところに惹かれました」と山本監督。20年にわたる物語なので息子役は3人の俳優が演じ分けることになる。父親役はパトリス・シェロー監督『ソン・フレール -兄との約束-』(03)に主演したブリュノ・トデスキーニ。「父親役は前から組んでみたかった人ですが、息子役のキャスティングは苦労しました。一人の子どもが成長したという真実味と演技力が両立するよう撮影開始ギリギリまでオーディションを重ねました」。今回の上映がワールドプレミア。フランスでもまだ上映されていないので、まずは日本での反応が楽しみだそうだ。

 

 次回、『短編②』は、7月23日(水)17:00より映像ホールにて上映される。


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