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【デイリーニュース】 vol.07 『短編④』 Q&A
『この坂道』『ストロボ』『ヨボセヨ』
左から『ヨボセヨ』佐藤草喜監督、『ストロボ』A.T.監督、『この坂道』安保匠さん、宮本ともこ監督
20日(日)の夜は短編コンペ部門の最終組となる『短編④』の上映が行われ、本編終了後に『この坂道』から宮本ともこ監督とヒロインの婚約者を演じた安保匠さん、『ストロボ』からA.T.監督、『ヨボセヨ』から佐藤草喜監督を招いてのティーチインが設けられた。
『この坂道』では、家業の工場の経営を巡って、父親と婚約者との間で板挟みになる若い女性の奮闘が描かれる。タイトル通り、ヒロインが自転車で駆け上がったり安保さんがダッシュしたりと、坂が効果的に使われている。坂をダッシュした安保さんは「監督は現場であまり多くを語らないが、役者としては試されているようで、鍛えられた」と語った。劇中で窮地に立たされている父親の表情は常に暗がりに沈んでいるが、最後に光の当たる場所に出てくることで、未来への予感を強調したかったという宮本監督。そこには「簡単には解決できない問題に対しても“あきらめない”という気持ちをなくさずに取り組んでほしい」という願いも込められている。
『ストロボ』は、人違いから映画監督になりすました青年が、霞ヶ浦や牛久大仏など茨城県の撮影スポットを巡るバスツアーに同乗し、周囲を巻き込み、巻き込まれながら小さな一歩を踏み出すまでのジェットコースタームービー。渡部豪太ら豪華なキャストが集い、次々とロケーションを変えて物語が展開していき、その軽快なテンポが小気味よい。普段はCMなどのディレクターを生業とするA.T.監督は、建築や陶芸に携わる登場人物たちの職業を自分の立場にもなぞらえ、誰が何のためにそれを作っているのかという“モノ作り”をテーマに追求していく。「答えは未来にしかないが、過去のヒントを生かして、今を作っていくしかないのかな」という言葉が、迷走しながらも前に進む主人公の足取りと重なる。
『ヨボセヨ』とは韓国語でいわゆる「もしもし」の意味。もともとは「すみません、誰かいませんか?」という文脈で用いられていた言葉を圧縮したものだそうだが、現代ではほとんどの人がその語源を考えずに使っているという。日本生まれで日本国籍を持つが韓国で育ち、これが初めての監督作となる佐藤監督。デリケートなベッドシーンでは、肌を露出する役者への配慮から自らもビキニ姿で撮影を決行し、当時の恋人に怒られたエピソードを披露した。そんな本作には「一番誰かにそばにいてほしいときは、いつも一人」という悲しいメッセージが織り込まれているという。劇中のイラストを描いてくれたという自身の友人について言及しようとした時、佐藤監督は声を詰まらせた。
悩んで笑って泣いて、まさに感情が振り回されっぱなしの3本立て。次回の『短編④』の上映は23日(水)10:30から映像ホールにて。