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【デイリーニュース】vol.21 「インキュベート・セミナー『アカデミー映像フォーラム』」
家庭用コンピューター1台で1本の映像を総合的に仕上げられる現在。
それでも学校から黒板がなくならないように、手描きアニメの魅力はこれからも残っていくだろう
谷東監督
23日(水)午後は、主に映像制作のプロを目指す学生を対象としたセミナー「インキュベート・セミナー『アカデミー映像フォーラム』~デジタル制作の支援ツールとコンテンツの今~」が開催。第一部と第二部に分けて、デジタル技術を使った映像の作り方と、現役のアニメーション監督として活躍する谷東監督を講師に招いたFlashアニメ演出についてのレクチャーが行われた。
まず第一部では、サイバーリンクのノンリニア動画編集ソフト「PowerDirector」を取り上げ、実際にパソコン上で同ソフトを操作する画面をスクリーンに映しながら、印象的な映像制作手法の編集テクニックが紹介された。
こうしたソフトを使えば、自分で撮影して取り込んだ映像素材を元に、逆再生、再生速度を遅めるスローモーション、逆に速めるファストモーションなど、お馴染みの効果を自宅でも手軽につけることができる。また、ある被写体を別の背景と合成させるクロマキー映像の作成も可能だ。
さらに、ある映像の上に別の映像を重ねるピクチャーインピクチャーのやり方、テレビアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」を例に取ったテキストの入れ方、複数のカメラで撮った映像をスイッチングしながら取り込むマルチカムデザイナー機能なども実演された。
第二部では近年増えてきたFlashアニメ作品の演出についてその現状が語られた。「秘密結社鷹の爪」シリーズで知られる映像コンテンツ制作会社ディー・エル・イーに勤務し、プロデューサーとしてテレビアニメ「THE FROGMAN SHOW」を立ち上げたり、安野モヨコの同名コミックを原作とした自身の監督作「監督不行届」がテレビ東京で放映されている谷監督は、Flashアニメ制作現場の最前線に立つ存在である。
アドビ システムズのコンテンツ制作ソフト「Flash」に端を発するそのメディアは、人手と時間と労力のかかるアニメを個人レベルでも制作できる画期的な規格を武器に発展してきたジャンルであり、「秘密結社鷹の爪」や「監督不行届」などもこれを用いて作られている。
動画素材のみならず、静止画・色・音などの加工も含め、デジタル技術を使えば家庭用コンピューター1台で1本の映像を総合的に仕上げられる現在。しかしそれでも手作りの感覚がなくなったわけではない。最後は「どんなにデジタル化が進んでも、学校から黒板がなくならないように、手描きアニメの魅力はこれからも残っていくだろう」と締めくくられた。