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【デイリーニュース】vol.09 『友達』 遠藤幹大監督・尾形龍一プロデューサー Q&A
「"友情"とか"友だち"という言葉とその存在との関係に違和感を感じていました」
左から遠藤幹大監督とプロデューサーの尾形龍一さん。ふたりは大学院の同級生でもある
3日目を迎えたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014。21日(月・祝)最初の上映作品は12本のコンペティション作品中で、日本映画のトップバッターとなる『友達』。本作の遠藤幹大監督は京都造形芸術大学在学中から自主制作映画を撮り始め、演劇活動を経て東京藝術大学大学院映像研究科に進学、黒沢清監督に師事した。
『友達』は同院の卒業制作作品。すでにロンドンのレインダンス映画祭やフランクフルトの日本映画祭「ニッポン・コネクション」で上映され好評を博している。 『友達』の主人公は売れない俳優の島田。オーディションに落ち続ける島田に同じような境遇の俳優・福地が紹介したのは、クライアントの要望に応じて俳優たちが様々な役を演じ分けていくという仕事。フレンドシップという名前の会社でその仕事を始め、初めて俳優として充実感を感じる島田の前に、「テロリスト」役を依頼する女子高生ミオが現れる。
東京藝術大学大学院映像研究科の卒業制作作品として撮影された作品、と聞けば、昨年、ソニーDシネマアワード審査員特別賞を受賞し、Dシネマプロジェクトに選出された『神奈川芸術大学映像学科研究室』が思い出される。実は『友達』には、同作の坂下雄一郎監督もスタッフとして参加している。それに気づいた司会者がそう指摘すると、壇上の遠藤幹大監督と尾形龍一プロデューサーは大笑いしながら肯定。お互いに助け合って制作される学生映画ならではの和やかな空気が会場に広がった。
クライアントの夢見る自分と人との関係性をプロの俳優に演じてもらおうという仕事をモチーフにしようという着想はどこから? という質問に監督は、「藝大に入る前に劇団の制作を手伝っていたことがあり、早い時期から俳優を主人公にしようとは考えていました。この仕事も俳優さんたちの話で聞いて、面白いなと調べてみたら本当に日本でもあるんですよ。ワケあり新郎新婦の友人役で結婚式にでる、とか。俳優もこれも、演技が金銭で取引される仕事だなと考えこのアイデアが生まれました」と答えた。さらに「僕自身、"友だち"とか"友情"という言葉や、それって一体どういう関係のことを言っているのかということについてずっと違和感があったんですね。ならば、人間関係から友情を語るのではなくて、言葉の側からそれってどんなことなのか描いてみると面白いかもと思い、タイトルを『友達』としてみました」
主人公は売れない俳優島田だが、途中でクライアントとして登場するミオが島田の運命を変えていく。すなわちふたりの主人公、ふたつの物語が展開していくことになる。「主人公は島田一人の予定でしたが、彼の前にはいろいろなクライアントが登場するので、彼らのことを描かない法はないかなと思い、考え直しました」と監督が言えば、プロデューサーが「今の時代は多くの人が、自分は代替可能な存在なのではないかと不安を抱え、自分でなくてはならないことを認めてもらいたいと思っていると思います。そんな不安や葛藤を、島田だけでなくミオや福地も抱えていることが表現できればと考えたんです」と付け加える。息のあったコンビぶりだ。
本作は卒業制作作品なので著作権は学校にあるが、「劇場公開を目指して作りました」と監督。「でも収入は僕らには入りません(笑)」とプロデューサー。それでも各国の映画祭で上映し、「笑うポイントは同じですが、海外の観客は反応の仕方が大きい」(尾形P)と手応えを感じている様子。昨年に続き、藝大のDシネマアワード獲得となるか!?
『友達』は、24日(木)にも14:30から多目的ホールで上映される。