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【デイリーニュース】vol.13 『PLASTIC CRIME』 加藤悦生監督 Q&A
「一応、泥棒はダメよ、というのが僕のポリシーですが」
左から母役の辻しのぶさん、夢人役の伊藤和哉さん、加藤悦生監督、父役の片岡功さん、千歳役の小池真吾さん
21日(月・祝)三本目の長編コンペティション部門作品は、日本作品の二本目『PLASTIC CRIME』。加藤悦生監督はすでにTV・CM・VPの映像ディレクターとして活躍しているが、長年の夢を叶えて自主制作で長編劇映画を撮りあげた。
「自主なんで、失敗しても自分のせい。出来上がらなかったら役者さんたちにごめんなさいって言えばいいと、好きなことをさせてもらいましたから苦労はなかったです。強いて言えば最初の10日間、朝から朝という撮影が続いた時は体はしんどかった。でも、僕は映画ってお客さんに観ていただいて完成するものだと思っているので、今日は本当にうれしいです」。
『PLASTIC CRIME』は、引きこもりでニートである主人公・夢人の物語。ある日彼の家に侵入してきたふたり組の泥棒、千歳と桐生になぜか気に入られ、家から連れ出されて外の世界に関わっていくようになる。ふたりから泥棒のレッスンを受けるうちに、初めて充足感を味わった夢人は変わっていくが、泥棒たちの元締め華子の下で働かされている韓国人女性ソニョンに心奪われ、またまた夢人の人生の歯車は狂いだす。
まずタイトルの意味を聞かれた監督。「プラスティック・クライムっていうのは、クレジットカードのスキミングなどの犯罪のことなんです。が、それよりもですね、夢人はプラモデルが好きでまだ作っていないプラモデルの箱を積み上げているんですが、そういうのをオタク用語で“積みプラ”って言うんですって。で、積み=罪=クライム、プラスティック・クライム(笑)」と説明。つかみはOK。客席の雰囲気がぐっと和らぐ。
監督はプログラムのコメントに、「夢は叶うという無責任なエールがニートやストーカーを生んでいる一因ではないか」と書いている。この意見と映画に対して、「夢は叶うという言葉を頼りに一歩踏み出せるんじゃないか」と“かつてニートでした”というお客さんからの質問が飛んだ。
それに対して監督は、「主人公の夢人は自分のことしか考えていないけれど利己的だとは思っていないんです。その彼がソニョンと出会い、初めて人のために考え、利他的な行動をする。もしかしたらその瞬間が彼の人生のピークかもしれない」。つまり夢が叶った瞬間かもしれないけれど、その後の展開は予想を裏切るものにしたというのだ。「それはね、泥棒はいけないでしょ、という僕のポリシーです(笑)」。
それなら、泥棒という行動ではなく他の方法もあったのではないか、という質問には、「そう考えていただけるってことは、すごくうれしいです」と答えた。
いろいろと考えさせるものを含みながら、青春映画でもあり、恋愛映画でもあり、クライム映画でもある本作。俳優の芝居を演出するのは初めてという監督を支えて映画をふくらませた俳優たちにとっても忘れられない作品になった様子である。
『PLASTIC CRIME』は 、25日(金)にも11:00より多目的ホールで上映されるのでお見逃しなく!