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【デイリーニュース】vol.14 『青、そして少しだけピンク』 ミゲル・フェラーリ監督 Q&A
「人生には悲劇と喜劇両方の要素があるように、両方の側面を描くことが大切」
ミゲル・フェラーリ監督
長編コンペティション部門出品作『青、そして少しだけピンク』は、現代のベネズエラを舞台に、同性愛者への偏見や暴力という深刻な問題を、シリアスになりすぎず、時にユーモアを交えて描いた作品。ミゲル・フェラーリ監督は、90年代からベネズエラの映画やテレビで活躍してきた俳優でもあり、本作で長編映画監督デビューとなる。
カメラマンとして成功し、同性の恋人ファブリシオとも良好な関係を続けているディエゴのもとに、別れた妻との息子であるティーンエイジャーのアルマンドがやってくる。父親がゲイであることを受け入れられないアルマンドと、息子への接し方がわからないディエゴ。そんなある日、ファブリシオが同性愛者を嫌悪する暴漢に襲われ、昏睡状態に陥ってしまう――。
「ベネズエラでは、今も同性愛に対する偏見が根強く残っています。これはベネズエラ映画として初めて男性同士のキスを見せた作品でもあるんですよ」とフェラーリ監督は説明する。
「ファブリシオが暴漢に襲われるシーンがありますが、これは実際に起こり得ることですし、現実はそれほどバラ色なわけではない。マチズモの強いラテンアメリカの国々では、同性愛者に対する暴行や殺人事件が頻繁に起こっており、このような現状を告発するのは非常に重要なことだと考えました。暴行現場とディスコがパラレルで描かれるシーンでは、ふたつの世界が存在することを表現したかった。ひとつはディスコの暗闇の中で、コミュニティが守られている寛容な世界。しかし外の世界では、理解が得られなければ攻撃される。それらを対比させています」。
作中には、神父が公然とテレビ番組で同性愛を批判するシーンもある。
「正しい情報が伝わらないことには、多くの場合、宗教が関係しています。カトリックでは同性愛は罪とされ、禁止されています。ベネズエラでは未だに同性愛は病気だとすら考えられている。先進諸国、同性婚が認められているスペインでさえ、同性カップルは養子を迎えるべきではない、などという意見が声高に叫ばれます。凝り固まった宗教的な考え方から偏見がさらに発展していく、というテーマを描きたかったのです」。
映画の中で起こる事件はショッキングだが、ディエゴが自分に自信が持てない息子と次第に理解しあっていくさまや、ゲイ仲間とのやりとりなどはコミカルに描かれており、重いテーマでも楽しく見ることができる。
「この作品は、コメディとドラマが融合しており、どちらの特徴も合わせ持っています。これは私のスタイルでもあります。観客に偏見なしに登場人物たちに共感してもらうことがまず重要だと思いました。ユーモアは観客をひきつけてドラマチックなストーリーに誘い込み、映画が終わった後により深く考えるきっかけを与えてくれます。人生においても、悲劇と喜劇、両方の要素がある。両方の側面を描くことが大切なのです」。
『青、そして少しだけピンク』は、22日(火)にも14:00から映像ホールで上映される。