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【デイリーニュース】 vol.03 『アヒルからの贈り物』 ミネア・ポペスク撮影監督 Q&A
「1羽のアヒルの撮影に250羽くらい使っています」
『アヒルからの贈り物』のミネア・ポペスク撮影監督
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016は、いよいよ今日からコンペティション参加作品の上映がスタートした。メイン会場のひとつである映像ホールでの最初の上映を飾ったのは、長編部門国際コンペティションに出品されているベルギー映画『アヒルからの贈り物』。思いがけずアヒルの雛を世話することになった2人の少女の思いを繊細に描き、モントリオール国際児童映画祭長編部門最優秀作品賞やECFA(ヨーロッパ児童映画協会)アワードを受賞した作品だ。
誕生日に父親からアヒルの卵をプレゼントされたキャシー(クラリス・デュロスキ)は、「雛は最初に目にしたものを母親と思い込む」と聞いて卵がかえるのを楽しみにしていた。だが、卵からかえった雛が最初に見たものは、バースデーパーティに来ていた車椅子の友だちマルゴー(レア・ワルニ)だった。キャシーはマルゴーに雛を譲ろうとするが、マルゴーの両親に飼うことを大反対され、雛は農場に送られることに。そこにいたらやがて殺されてしまう! 2人は農場から雛を取り戻し、雛が幸せに暮らせる「鳥の楽園」に連れて行こうとするのだが……。
上映後のQ&Aには、ベルギーの田園風景を見事に美しい映像に収めた撮影監督のミネア・ポペスクが登壇した。
「この映画は、監督のお嬢さんの障碍者である友人の実話に基づいています。リアルな映像にしたかったので、もちろん照明も使っていますが、極力自然光で撮影しています」
映像の美しさもさることながら、本作で驚くのは、なんといってもアヒルの名演(?)。人の後ろをささっと横切ったり、ポーズをとったり、何度も同じ場所に戻ってきたり、カメラに向かってまっすぐ泳いで来たり。一体どうやって撮影したのだろう?
「撮影には200から250羽くらいの雛を使いました。アヒルの雛は成長が早く、1週間でどんどん大きくなるので、20から30羽ずつ入れ替えていきました。雛は最初に見たものを親だと思い込むと言われていますが、必ずしもそういうわけではないようで、カメラの載ったボートを自分から追いかけてきたり、撮影にはそんなに苦労しませんでした。実際に映画に写っているのは50羽くらい。シャイなアヒルも、生まれながらにして俳優のようなアヒルもいるんですよ(笑)」
主人公のひとり、マルゴーは、筋ジストロフィーのリハビリ中で車いす生活を強いられているという設定。彼女の演技も非常にリアルだ。
「彼女はこの映画が初の演技経験ですが、実際に障碍を持ち、車いすで生活しています。とてもスイートな少女で、俳優としても素晴らしい。撮影期間中は雨ばかり降って撮影が中断することも度々で、彼女が車いすでボートに乗るシーンは、彼女を何度もボートに乗せたり降ろしたり、万が一を考えてボートの横に救助スタッフが待機したりで多少時間がかかりました」
撮影はベルギー南部の各地で行っている。終盤に出てくる湖は、実際に学校の授業で自然観察などにも使われている場所なのだとか。
「2人は物語の中で200kmくらい移動しています。舞台となっている川は、車いすを押しながら移動するという設定を無理なくするためのものでもありますが、ひとつの場所から違う場所に移動する彼女たちの成長のシンボリックな存在でもあるのです」
『アヒルからの贈り物』は、次回、7月20日(水)14時30分から多目的ホールで上映され、ポペスク撮影監督によるQ&Aも行われる。