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【デイリーニュース】 vol.04 『短編 ①』 Q&A 『キッチンの神様』『VANISH』『夕暮れの催眠教室』
キャリアも年齢も違う監督たちがそれぞれ真摯に映画と向き合う
右から『キッチンの神様』中根克監督、出演の鈴木花音、松野美佳、『VANISH』畑井雄介監督、出演の松林慎司、『夕暮れの催眠教室』井上博貴監督
短編コンペティション部門12作品を3本ずつに分けた最初のグループ『短編①』の上映が、多目的ホールで行われた。1本目の途中で震度4の地震が起こり、観客を驚かせたが、安全が確認され、上映は無事続行された。
上映作品は、キッチンのショールームに勤めるシングルマザーの奮闘を描く『キッチンの神様』、死体処理業のやくざとある特殊能力を持つ男の共棲関係を描く『VANISH』、催眠術で恋愛を繰ろうとする女子高生を描いた『夕暮れの催眠教室』の3本。
ほぼ満席での上映を終え、登壇したのは『キッチンの神様』の中根克監督と子役の鈴木花音、ヒロインの同僚を演じた松野美佳、『VANISH』の畑井雄介監督と特殊能力のある男を演じた松林慎司、『夕暮れの催眠教室』の井上博貴監督の6人。
観客から「『VANISH』は、短い中にいろいろな要素が入っているが、もしや長編にしようという野心があるのでは?」と問われた畑井監督は、「まさにっ! 実はこれはパイロット版なんです。文字の企画書と、映像版の企画書としてパイロット版を作り、いろいろな人に見てもらって長編を撮ろうとしています。といっても、これはこれで短編として完成していると自信を持っています。長編化の方はまだ具体化していないので、お客さまの中で手伝ってやろうという方がいらしゃいましたら、ぜひよろしくお願いします(笑)。長編の構想はもうできています」。
「死体を運ぶためのベンツを、最後にぶっ壊すことになっていたんです。でも、時間の関係でカットし、まだそのままおいてあります(笑)」とエピソードを語った松林は、「あくまでお金じゃなくて時間の問題です(笑)。撮影は3日間でしたから」と言い訳する畑井監督と、「にもかかわらず茨城と栃木なんていうハードなロケの移動があった(笑)」と絶妙なトークを繰り広げた。
『キッチンの神様』のコンセプトをたずねられ、「キッチンのショールームの仕事はあまり知られていませんが、そこで働いている人たちにも、子育てと仕事の両立など悩みはあるし、それぞれみんな懸命に生活していることを知ってもらいたくて始まった企画です」と答える中根監督は、「ヒロインが変わるきっかけとなる老人客の役で、元日活の監督、上垣保朗さんに出演していただきました。一度断られてしまったんですが、最終的には出演していただいた。でもまんざらでもなかったようで、完成披露試写の後、DVDを10枚欲しいと言われました(笑)。ただし、セリフを覚えるのには苦労なさったいたみたいですが」ととっておきの撮影秘話を教えてくれた。上垣監督は美保純主演の『ピンクのカーテン』(82)などで知られる。先輩監督への演出はとても「緊張」したそうだ。
『夕暮れの催眠教室』で飛び出したのは、「主役の女子高生らのスカートがとても短かったのはなぜか?」という変わり種の質問。 「言っときますが、あれは僕の趣味ではありませんから(笑)」と井上監督はきっぱり否定した。「知り合いの製作会社の方から女子高生の制服を貸してもらったんですが、主役の女子2人が170㎝くらいあるうえに足が長くて、借りた制服を着たらすごくスカートが短くなっちゃったんです。監督の趣味を疑われているんじゃないかと懸念してたら、スタッフがシーバーで“スカート、短すぎるんじゃない”って話しているのが聞こえて……(笑)。僕の趣味じゃないですから! でも彼女らは想像力があり、呑み込みも早いので、セリフの意図を話してイメージを伝えたら、やっているうちにキャラクターをつかんで演じてくれました。順撮りではありませんが、感情を一歩ずつ進められるように作っていきました」
短い質疑応答に、キャリアも年齢も違う監督たちがそれぞれ真摯に映画と向き合う様が伝わってきた。
『短編①』は次回、7月19日(火)17時から映像ホールで上映があり、Q&Aも行われる予定。