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【デイリーニュース】 vol.08 『アニメーション』 Q&A 『おひさま』『アチラカセカイ』『あたしだけをみて』『東京コスモ』『愛のかかと』『Noisy Midnight』『こんぷれっくす×コンプレックス』
部門創設3年目を迎え、技法も内容もますます充実のアニメーション
前列右から『あたしだけをみて』見里朝希監督、『こんぷれっくす×コンンプレックス』ふくだみゆき監督、声の出演の林奏絵と上妻成吾、『おひさま』作編曲家の佐藤匡志朗、後列右から『東京コスモ』原案&画コンテの岡田拓也、『Noisy MIdnight』製作の高原紗央理、梅津侑華監督、『愛のかかと』円香監督、『おひさま』しょ~た監督
実験性の強いものからエンターテインメント性の高いものまで、アニメーションコンペティション部門に応募された58本の中から厳選された12作品が、18日(月・祝)、多目的ホールにて上映された。2回に分けて行われたQ&Aの前半に登壇したのは、元気のなくなった“おひさま”を旅人が励ます姿を絵本風タッチで描くミュージカル・アニメ『おひさま』のしょ~た監督。掃除ロボットと子猫の攻防戦を、CG技術を駆使して躍動感たっぷりに展開するSFアニメ『アチラカセカイ』の三島敦監督だ。
大学の卒業制作で『おひさま』を作ったというしょ~た監督は「まさかこんな大規模な映画祭で、たくさんの観客の方々に見ていただけるなんて……」と、感無量の挨拶をした後、「卒制とは思えないほど肩の力の抜けた、大らかな作品ですね」という感想に対して、「人に何かを伝えようとする時、固く、真面目になりすぎると、かえって伝わりづらくなるのではないかと思うので、敢えて真面目すぎないでやろう! を作風にしています」と自らのスタイルを解説。
ゲーム業界で長年働いてきたキャリアを持つ『アチラカセカイ』の三島監督は「本業の方では、なかなかできないタイプの作品を作りたかった」と、3年かけて本作品を個人制作したモチベーションを明かす。「私たちの住んでいる世界とは違う別世界というものを、アニメーションだからこそ表現できると思いました。特に小さいお子さんに見ていただけると嬉しいです」とアニメーションの持つ力を語ってくれた。
後半に登場したのは、羊毛フェルトで作った可愛らしいカップルが修羅場の喧嘩を展開する『あたしだけをみて』の見里朝希監督。一人暮らしの若い女性の生活と冒険をフルCGで描いた『東京コスモ』の原案・絵コンテを担当した岡田拓也。女性の欲望を大胆にデフォルメされたアニメーションで表現する『愛のかかと』の円香監督。カートゥーン風キャラクターたちがドタバタコメディを繰り広げる『Noisy MIdnight』の梅津侑華監督。思春期のトキメキをフラッシュアニメで繊細に綴った『こんぷれっくす×コンンプレックス』のふくだみゆき監督と、出演声優の林泰恵、上妻成吾。
小さな女の子の観客から「女の人がヘビに変わってしまって怖かった」という感想を受けた『あたしだけをみて』の見里監督は、「僕はホラー動画を見るのが好きなのですが、大学の卒業制作を作るにあたって、アニメーションで“女性の怖い顔を表現する”ということをテーマに据えて作りました。怖いといえば爬虫類、爬虫類といえばヘビ……というふうに連想していって、ちなみに僕の姉がヒロインの声を演じてくれたのです」と制作動機を語った。
「友人である宮内(貴広)君と一緒に取り組み始めたのですが、あまりに大変で、実は僕は途中で逃げてしまったんです」と驚くべき裏話を明かしてくれたのは、『東京コスモ』の岡田。 「どの辺りで離脱されたんですか?」という質問に、「主人公の部屋――これは僕の部屋の間取りとほぼ同じなんですが――のデザインを設定するあたりまでは携わっていました。完成後は、宮内君に代わって様々な賞に応募したり、本日も舞台挨拶に出席したり、しています」と、ものづくりに携わる者同士の関係性を窺わせるコメントを。
「女性の性欲について調べて書いた論文が、本作制作のきっかけだった」と語る円香監督は、『愛のかかと』を2年かけて完成させたという。 「登場する女性たちの共通点は、自分だけの密かな愉しみを自覚して、追求している点です。ハイヒールをキーアイテムとして使っている理由は、ハイヒールは脚を美しく見せるけれど、とても足に負担がかかります。美しさには痛みが伴う。それは快楽にも云えることではないのか……そんな思いを込めています」と自作を分析した。
“隣人トラブル”という現実的なテーマを、ユーモアあふれるタッチで描いた『Noisy MIdnight』の梅津監督は、『トムとジェリー』や『バッグス・バニー』など、往年のアメリカ・テレビアニメの雰囲気を意識したと語る。「カートゥーンらしさを出すために、敢えて現代アニメのような滑らかな動きではなく、少々ぎこちない、どこか懐かしさのある動きを表すことを目指しました」。本作が初めての監督作とのことで、「感想をいただけるのが本当に嬉しい」と喜びの声を客席に伝えてくれた。
わき毛と恋の相関関係を考察するという内容に、客席からの質問も多数寄せられた『こんぷれっくす×コンンプレックス』。なんと、ふくだ監督の実体験が基になっているという。 「高校生の時に好きだった男の子が、わき毛が濃くて……当時の自分はそれが許せなかったんです(笑)。 その時のことを思い出しながら制作しました」。フラッシュアニメーションである本作は、最初に声を収録して、いわば演技優先で絵を付けていったとのこと。主人公、ゆい役の林は「ゆいが武尾君に向かって、わき毛への熱い思いを語る場面で苦労しました。私はゆいのように、わき毛への情熱はさほどないので(笑)、演じながら『足りない! もっとわき毛を愛さなきゃ!』と自分に言い聞かせました」。一方、ゆいから思いを寄せられる(?)武尾君役の上妻は、わき毛をさわられる場面が大変だったと語る。「監督から何度も『実際にさわられている感じの声を出して!』と指示されて、そういう場面を演じるのが初めてだったので……大変でした。とてもいい経験になりました」
個性的な作品群に、客席からは多くの質問が飛び交い、熱く、和やかに、朗らかにQ&Aは幕を閉じた。
『アニメーション』は次回、7月22日(金)17時より映像ホールで上映され、Q&Aも行われる。