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【デイリーニュース】 vol.09 『園田という種目』 太田真博監督、松下倖子、安部康二郎、牧野琢也 Q&A
私小説ならぬ私映画『太田、逮捕されたってよ』みたいな映画を作りたかった
左から、『園田という種目』の太田真博監督、出演の松下倖子、安部康二郎、牧野琢也
大学時代の演劇仲間が集まった。釈放された園田を元気づけるための会だったのに、些細な口論から園田は帰ってしまっており、残された仲間たちはその場にいない園田について語り合う。一方、園田の勤めるコールセンターでは、新人の園田に女性社員たちが興味津々、休憩室で毎日噂話を繰り広げていた――。
長編コンペティション部門に出品されている日本映画『園田という種目』は、タイトルロールの当人不在のまま、周りの人々の会話から園田という人物が浮かび上がってくる凝った構成のドラマだ。18日(月・祝)、映像ホールでの上映後、太田真博監督、出演者の松下倖子、安部康二郎、牧野琢也が登壇、Q&Aを行った。
釈放され社会復帰した人物をみんなで語り合うという物語の発想はどこから生まれたのか、という質問に、脚本、撮影、編集も担当している太田監督は、「私自身が逮捕されて、釈放されたあとに物語を執筆しました。私が出てきたあと、周りの人と向き合おうとする試みをしている時に書いた、私小説ならぬ私映画です。ほぼ園田イコール太田、という感じですね」と仰天の回答。物語の構成が映画化もされたベストセラー小説『桐島、部活やめるってよ』を思わせる、と指摘されると、「あの小説が大好きで、200%意識しています。留置所にいる時に『太田、逮捕されたってよ』みたいな映画を作りたい、と思ったのがこの作品の始まりです」と話す。
登場人物たちの自然なセリフの掛け合いは、アドリブのようにも聞こえるが、太田監督は「全部脚本通り。役者さんたちには、一言一句変えて欲しくないとリクエストしています」という。脚本執筆にかかったのは約半年。稽古を何日も重ねた後に、みんなの休みの日などに少しずつ撮影を進め、実際の撮影は計14日間くらいだったとか。
大学時代の友人役の松下は、「稽古の過程で、即興しながら脚本を作っていきました。自分が演じた役だけでなく、稽古では他の人、女性が男性の役も演じるので、全体のキャラクターを理解しやすかったです」。同じく友人役の安部は、「相当長く稽古をして、空気を作り、共有する作業をたくさんやりました。撮っている時、初めて本番を楽しいと感じましたし、このまま終わらなければいいのにと思いました」。職場の同僚役の牧野さんは、「稽古は週に2、3回、それが何カ月か続きました。即興をもとに脚本ができていくので、生でしゃべっている感じで覚えやすかったです」と話した。
映画の冒頭で流れ、カラオケ屋のシーンでも歌われる歌が印象的。一瞬、沢田研二の『勝手にしやがれ』に聞こえる曲なのだ。監督は、「私自身が大学演劇をやっている頃、音楽に合わせて人と同じ動きをひたすらするという稽古があって、よく『勝手にしやがれ』を使っていたんです。それは使えないので、完全に同じテンポで、オリジナリティが溢れすぎない楽曲を仲間に作ってもらいました(笑)。作詞は自分です」。
「私は“お客様”という存在に向けて映画を作ることはせず、いつも特定の誰かに向けて作品を作っています。今日も会場に特定の誰かがたくさん来ていますが、たまたま今ここにいる第三者の方たちにも伝わったら幸せですし、そういう方々と時間を共有できたことを嬉しく思います」と太田監督は締めくくった。
『園田という種目』は次回、7月21日(木)14:30から多目的ホールで上映され、太田監督と出演者によるQ&Aが行われる。