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【デイリーニュース】 vol.11 『短編③』 Q&A『くだらない くだらない この世界。』『テイク8』『TO FEEL HUMAN』
会話劇でコメディでファンタジーで人間を描く
右から、『くだらない くだらない この世界。』高山康平監督、出演の加藤理恵、『テイク8』上田慎一郎監督、出演の芹澤興人と山本真由美、『TO FEEL HUMAN』字幕の尾崎愛
短編コンペティション部門の第3グループ『短編③』は、自殺志願の男が大食い娘と出会う『くだらない くだらない この世界。』、結婚式の自主映画を撮っている監督の前に恋人である主演女優の父親が現れる『テイク8』、天使か悪魔か、人間になりたいと願う正体不明の男の運命を描く『TO FEEL HUMAN』の3作品を上映。
多目的ホールでの上映後に『くだらない くだらない この世界。』の高山康平監督と出演の加藤理恵、『テイク8』の上田慎一郎監督と出演の芹澤興人と山本真由美、『TO FEEL HUMAN』の字幕を担当した尾崎愛の6人が登壇した。
『くだらない くだらない この世界。』の撮影は2年前に行われた。
「この作品は、高校と大学が一緒だった先輩が突然自殺してしまったことにショックを受けたのを思い出して作ったものです。はた目には順調に見えたのに何かにとらわれてしまったのかなぁ、真面目に生きようとしすぎて死んじゃったのかなぁ、と思ったんです。それで、自殺しようとしている人の話なのだけれど、あまり深刻にならず軽い感じで、悩みを裏から描いてみようと思いました」と高山監督。
男を演じた池田良とは前にも組んだことがあるが、死のうと思ったらしい大食い娘の役にオーディションで加藤理恵を選んだ。深刻なようですっとぼけている大食い娘を、絶妙な受け答えと間で演じた加藤は、「監督には、淡々としていてください。感情を押し付けないようにと言われました」と明かす。この娘、男が寝ている間に彼の顔に落書きをしてしまう。「諸行無常・メークイーンと男爵芋・ユビキタス云々」などと書かれた落書きの言葉を選んだ理由を聞かれ、「クレジットに“落書き/高山兄弟”と書いておいたのですが、あれは僕のことです。双子の弟がデザイナーをしていまして、二人で『できるだけくだらない言葉を書こう』って考えて書きました。だから、意味は無いんです(笑)」。テーマとスタイルのギャップが印象的な作品だった。
昨年、埼玉県とSKIPシティ彩の国ビジュアルプラザが製作したオムニバス『4/猫 -ねこぶんのよん-』で本映画祭に登場した上田慎一郎監督。「正々堂々と応募してやって来ました」と『テイク8』で見事コンペティションへのノミネートを果たした。
「自分の結婚式の4日後にクランクインした作品です。時期って重なる時には重なるものなんですよね(笑)。その時にしか撮れないものを撮るというのが僕の主義なので、今回もまさに、この時でないと撮れないものが撮れたと思っています」。主人公は芹澤興人演ずる自主映画の監督。結婚式をテーマにした映画を撮影しているが、ひょんなことから監督と花嫁役の恋人とその実父のバトルの場へと変わって行くワンシチュエーション・コメディである。「ほぼ当て書きしました」と監督に言われた芹澤だが、「映画祭でお客さんの反応を見て、やった! と思いました」と満足そう。本映画祭でも3本の出演作が上映される芹澤は、最近はメジャー作品でもしばしば見かけると観客席からほめられると、「いやー、恥ずかしいなぁ。自分は自主映画でやって来たので自主映画にはなるべく出たいと思っているんですよ。それに年に一本は主役を演じたいですしね(笑)」。上田監督の言う「本人は一生懸命にやっているのに、外から見るとおかしいと思えるのがコメディ」という定義にぴったりの主役ぶりである。
もう一人の主役、恋人の女優を演じた山本真由美は「自分の仕事って、最初は客観的に見られないものですが、こうやって時間をおいて、お客さんと一緒に見ると、監督の意図とか、こう見られているんだとわかって、映画ってお客さんと一緒に育って行くんだなって思いました」としみじみ。上田監督も「そうですね。完成し直すって感じですよね」と納得の面持ちだった。
3本目の『TO FEEL HUMAN』の鈴木淳評監督は現在アメリカ在住。本作はハリウッドの映画学校に留学した監督がアメリカで制作した一本。監督の友人であり、女優であり、字幕翻訳家として本作の日本語字幕を担当した尾崎愛が、監督の代わりに登壇した。
「この作品は監督が留学して2~3週間したあたりで撮影されたものです。当時監督はまだあまり英語ができず、シンプル&スタイリッシュをコンセプトに、監督・製作・脚本・撮影・編集を全部自分でやっていました。字幕を作るためには台本が必要ですが、鈴木監督は厳密に脚本を作って撮る人ではありません。俳優に任せて撮って、それからスクリプトに書き起こしたのではないかと思います。監督にはこれを長編にする計画がありまして、今回、謎だらけだった主人公とその仲間の正体は長編で明かされることになると思います」
ハリウッドの製作方法を身に着け、ハリウッドに仲間を作った鈴木監督が、本作品を長編化するのが待ち遠しい。
『短編③』は次回、7月21日(木)17時00分より映像ホールにて上映され、Q&Aも行われる。