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【デイリーニュース】 vol.17 『幸せを追いかけて』イングヴィル・スヴェー・フリッケ監督Q&A
失敗や挫折、何かを諦めながら人は学び成長する!?
『幸せを追いかけて』イングヴィル・スヴェー・フリッケ監督
失敗や挫折、何かを諦めることによって人は成長していくのかもしれない。
年上の作家と出会い、恋に落ちる生真面目な女子大生のシグリ。自らの出産する姿を観客に見せる“パフォーマンス・アート”を思いつく臨月間近のアーティスト、トリーネ。かつて養子に出した息子との再会を願う、元作家のアグネス。幸せを求めて必死に生きる3世代、3人の女性の姿を、柔らかなタッチで描くノルウェー発のアンサンブル・コメディ『幸せを追いかけて』。
イングヴィル・スヴェー・フリッケ監督のQ&Aが、20日(水)映像ホールでの上映後に行われた。
初来日で昨日、日本に着いたばかりというフリッケ監督は、ちょうど現在開催中の、マイケル・ムーアが主催するトラバース・シティ映画祭(※ アメリカ、ミシガン州)からも招待を受けていたという。
「ですが、一度日本に来てみたかったですし、日本の観客の皆さんにこの映画がどのように受け止められるか、とても興味がありました」
フリッケ監督にとって本作は長編映画デビュー作となる。異なる世代の女性たち3人を主人公にした理由を、こう語った。
「原作小説『Wait,Blink』を読んで、非常に共鳴しました。というのも、私は長らくの間、女性を描いた映画を撮りたいと、ずっと考えていたのです。原作に込められているユーモア、深刻なことを深刻になりすぎないよう捉える成熟したまなざし、興味深いキャラクター。原作者のグンヒル・オイエハウグさんと一緒に脚本を執筆しました」
共作作業を通して、映画版は原作とは異なる構成にし、キャラクターにも変更を加えたという。
「たとえば、主人公のひとりであるアグネスという人物は、映画オリジナルのキャラクターでして原作小説には出てきません」
アグネスを演じたのは、ノルウェーのショービス界のベテラン女優、アンネ・クリグスヴォルだ。
「脚本を書いている段階から、アグネス役には彼女を想定していました。脚本を送ったところ、幸い気に入ってくださって、出演を快諾してくれたのです」
トリーネ役のヘンリエッテ・ステーンストルップは、テレビを中心に活躍する人気コメディエンヌである。この2人のキャスティングは順調に進んだが、最後のひとり、シグリ役はやや難航したとのこと。選考の末、演技を学んでいる新人女優インガ・イブスドッテル・リッレオースが抜擢された。
「インガから送られてきた、応募用動画に惹かれましたね。それに彼女はシグリと同じく芸術を学ぶ学生でもあるので、役柄にぴったりだと思いました」
トリーネのエピソードで描かれる、“女性にとっての出産と仕事”についての意見を客席から求められ、監督はこう答える。
「北欧は男女同権が徹底しているというイメージがありますが、実際はなかなか大変なのです(笑)。子どもとキャリアの両立は、女性はもちろん男性にとっても大きなことで、完全な方法というのはないですよね」
自身も2人の子どもを持ち、夫は本作の音楽監督だそうだ。
「プロデューサーから、『配偶者と一緒に仕事をするのは大変ですよ』と忠告をされましたが、私はともかく夫は大変だったかもしれません。というのも、普段、彼が手掛けているタイプとは少々異なる実験的な音楽ばかりを要求してしまったので(笑)」
“主人公たち3人は、それぞれにどこか【おバカさん】で、そこが素敵ですね”という感想も寄せられた。 「そう。20代のシグリも、40代のトリーネも、60代のアグネスも、誰もがおバカさんですね。馬鹿げた失敗をして、仕事も人生も、なかなか思うようにいかない。私もそうです。でも、人はそうした失敗や挫折、何かを諦めることによって学んだり、気づきを得たりして、少しずつ成長していくのではないでしょうか。そうして、“パーフェクトな自分”になる日は、少なくとも私にはやってこない気がするのです」
理知的、かつ穏やかな表情で映画と、そして作品に込めた人生観を語ってくれた。
『幸せを追いかけて』は次回、23日(土)11時より多目的ホールにて上映され、再びQ&Aも行われる。