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【デイリーニュース】 vol.21 関連企画「カメラクレヨン~子どもたちが作った映画がいま、面白い!~」舞台挨拶
面白さがたくさん詰まった、子どもたちによる映像制作
23日(土)、多目的ホールでは、子どもたちが映像制作にチャンレジした特別企画「カメラクレヨン」が上映された。
映画監督で脚本家、スクリプトドクターの三宅隆太さん
第1部は、埼玉県内の小学5年生、50校150クラスもの生徒たちが授業で番組制作に取り組み、寄せられた500作品の中から厳選された7本を上映するというもの。映画監督であり、“脚本のお医者さん”こと「スクリプトドクター」としても活躍する三宅隆太さんをゲストに招いて、講評とM・I・Pを選んでいただいた。
『個人情報の大切さ』を制作した中居小学校と『図書室戦争』を制作した飯塚小学校<のみなさん
中居小学校の『個人情報の大切さ』は、名札を落とすという些細な出来事を題材に、個人情報について描いたもの。「身近なことを題材に社会を描写しようと思った」というスタッフ児童の感想に、三宅監督は「不審者の不審な感じがよく出ていた」とコメント。続く飯塚小学校の『図書室戦争』は、図書室が戦場と化すアクション作品だ。「ヘルメットには布を被せて、手榴弾が爆発するシーンでは、はったい粉を包んで吹き飛ばしました」と、工夫を凝らした撮影の内幕を語る児童に「カット割りはまさに映画のそれ」と三宅監督。
『地震の訓練をしよう』を制作した里小学校と『まさかのてんかい』を制作した本町小学校のみなさん
地震の恐ろしさと、まさかの備えの大切さを説く里小学校の『地震の訓練をしよう』は、「揺れの感じを出すためにカメラを揺らして、出演者は机に掴まる演技をしながら、実は机の脚を揺らしてもいました」という児童ディレクターの言葉に、「その手法はプロもしています」と三宅監督。「揺れる様子も迫力がありましたが、音がまた見事だった」と、技術部の仕事ぶりを褒め称えた。
公共の場所でのマナーをテーマにした本町小学校の『まさかのてんかい』は、前半は電車内、後半はイス取りゲームという設定だ。 「前半だけだと真面目すぎるような感じがして、もう少しくだけた感じも出したくて、後半部も作りました」と言う児童ディレクターに、三宅監督は「人は何をもって電車を電車と認識するのか。そういうイメージをよく掴んでいる」と感想を。
『学校のプールはどこに?』を制作した戸塚北小学校と『少女の謎』を制作した朝日東小学校のみなさん
続いて、自分たちの通う学校を紹介するビデオニュース3作品が上映された。戸塚北小学校の『学校のプールはどこに?』は、屋上にあるプールの魅力を、可愛らしいリポーターが伝えるという内容だ。「屋上で泳げるのは気持ちいいけれど、真夏は床が熱くて大変。目玉焼きができそうに熱い」と、番組内と同じように愛嬌たっぷりにコメントするリポーター役を務めた児童に、「流れるプール風にした演出や、水着姿に変身する場面が特撮ドラマと共通する手法を使っていて、大変感心した」と監督は激励。
学校にある少女の銅像のルーツを探る、朝日東小学校の『少女の謎』。「うちの学校にしかない歴史を調べてみたかった」と、ディレクター児童は語る。それに対して三宅監督は「毎日、なにげなく当たり前のように目にしているものに着目する視点は大切」と、着眼点の秀逸さを指摘した。
『レッツJAPAN文化』を制作した松原小学校は自作の句を持ち寄った
最後に上映されたのは、俳句作りを取り入れている松原小学校の『レッツJAPAN文化』だ。こちらもまた、キャラの立ったリポーターが場内を湧かせ、終了後には登壇した児童と先生が自作の句を披露してくれた。俳句作りをモチーフとした理由を「他の学校にはない、松原小の独自性だから」と説明するディレクター児童に、「映像はシンプルだけどテーマを明確に持っていて、何よりもリポーターに魅力がある」と三宅監督は感想を述べた。
そして気になるM・I・Pは……本町小学校の『まさかのてんかい』に決定。「短い尺にも拘らず、2部構成としているチャレンジ精神。電車の中という空間を的確に表現している点。登場する老人たちのキャラクター性。面白さがたくさん詰まっています」と、子どもたちによる映像の完成度の高さを真摯に受け止め、温かい講評を授けた。
『まさかのてんかい』を制作した本町小学校がM・I・Pを受賞した
第2部は、川口子ども映画クラブが制作した短編映画2作品
生き物の寿命を見ることができる高校生・奏斗が、自分と同じ能力を持つ転校生・茜と出会うSF青春映画『冷たい瞳』。
『冷たい瞳』の制作チーム
キャスト・スタッフと共に登壇した小林武人監督は「小学生の頃に読んだホラー小説がきっかけでした」と着想の元を明かす。主人公の前に現れる謎めいた茜役の秋山夏海さんは、「私自身、悪役が好きなので演じていて楽しかったです」と演技初挑戦の感想を語ると、「この人、ドSなんです!」と小林監督からすかさず突っ込みが。「演者の資質を活かして役に落とし込むって、映画作りでとても大切なことだよね」と三宅監督もうなずいた。
『高校生映画人』の制作チーム
高校のフィルムクラブを舞台に繰り広げられる人間模様『高校生映画人』は、青春映画であると同時に群像劇、そして映画作りを通して主人公の成長も描かれる。 「現場ではアドリブがたくさん飛び交いました。劇中のように怒声をいっぱい飛ばし合うことはないのですが、実際の自分たちのやり取りに基づいています」と渡辺隆介監督は語る。大きな存在感を見せた部長・溝口役に扮した稲葉琉衣さんは、実は撮影時は中学3年生だったという。
「あのキャラクターはお金持ちで、だから自信たっぷりという設定で演じました」と役柄についての解釈を説明してくれた。
「2本とも、思っていた以上のクオリティで驚いた」と三宅監督は最後に率直な感想を口にする。「現在は映像制作技術が凄まじく発達して、プロでなくとも、誰でも映画を撮ることができる時代に突入しています。この新しい時代に、若い世代の人たちがこれからどんな映画を作っていくのか、非常に楽しみです。なによりも本日鑑賞した全ての作品から、関わった人たちが楽しんで作っていることが、生き生きと伝わってきました。僕の方こそ大変勉強になりました」