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【デイリーニュース】 vol.10 『ダーリンの憂い』マレク・セプティムス・ヴィーザー撮影監督 Q&A
飛べなくなったプリマは、狂気の刃を振りかざす
『ダーリンの憂い』マレク・セプティムス・ヴィーザー撮影監督
国際コンペティション部門出品作のデンマーク・スウェーデン合作『ダーリンの憂い』は、バレリーナと演出家の心理を巧みに描いた人間ドラマだ。2017年のロンドン映画祭でワールド・プレミアされ、今回がアジアン・プレミアとなる。
物語は、世界的に活躍するプリマのダーリン(ダニカ・クルチッチ)が、「ジゼル」のリハーサル中にけがをして降板する場面からスタート。演出家のパートナーと暮らす彼女は、代役を務める若いポーリー(アストリッド・グラルップ・エルボ)の指導役を買って出る。しかし、ポーリーの成長ぶりを目の当たりにし、葛藤に苦しむようになっていく。
製作したのは、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』などで知られるラース・フォン・トリアー監督作品や『偽りなき者』のトマス・ヴィンターベア監督作品などを手掛けるデンマークのZentropa社。監督は本作が2作目となるデンマークの新鋭女性監督、ビアギッテ・スターモス。プリマをめぐる女同士の心理戦や、男女の駆け引きなどのシーンは、手持ちカメラを用いた撮影により、いっそうの緊張感が漂っている。
撮影監督のマレク・セプティムス・ヴィーザー氏は「カメラを肩に載せて、オペレートしました。俳優たちに近づいて、リズムに乗って撮影したいと考えたのです。それを実現できる唯一の方法でした。俳優たちが踊りを見せる中、私も踊っていた感じです」と振り返った。
使用したのは「ALEXA Mini」という小型カメラと68〜69年製造のクック社の古いレンズ。「シャープだけれども、柔らかな感じを出したかったんです。クルーは照明、照明アシスタント、フォーカス担当、カメラアシスタントという少人数。照明に関しては、なるべくその場にあるものを使いました」と明かした。
主演のダニカ・クルチッチはスウェーデンの人気TVドラマ「THE BRIDGE/ブリッジ」やデンマーク国内で大ヒットとなった『特捜部Q キジ殺し』などに出演する有名女優。しかし、バレエ未経験だったため、撮影の7カ月前から、バレエ・コーチ、フィジカルトレーナーについたそう。さらにはダイエットを行い、体型を近づけることで、バレリーナとしての役作りを徹底した。
撮影監督は「7カ月でバレエができるわけもないので、2人の代役のダンサーの演技とうまく組み合わせて、バレエシーンを撮影しました。役の前と後の写真を見てもらえれば、彼女がいかにバレリーナに近づいたかが分かると思います。よくやってくれました」と讃えた。
一方、ポーリー役のアストリッド・グラルップ・エルボは小さい時からデンマーク・ロイヤル・バレエ団で学んだプロダンサーとのことで、「演技はまったくしたことはなく、これが初めての芝居です。彼女は映画の中で、自分自身を演じているような感じだったと思います」と話していた。
『ダーリンの憂い』の次回上映は、7月18日(水)18時30分からMOVIX川口。19日(木)11時からの映像ホールにおける上映ではQ&Aも行われ、マレク・セプティムス・ヴィーザー撮影監督が再登壇を予定している。