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【デイリーニュース】 vol.23 15周年特別企画「飛翔する監督たち from SAITAMA」吉田恵輔監督Q&A 『犬猿』
「うまい人をキャスティングした時点で半分は勝った気持ち」躍進する埼玉出身監督、演出へのこだわり
『犬猿』の吉田恵輔監督
映像産業の振興に注力する埼玉県出身の映画監督にスポットを当てた15周年特別企画「飛翔する監督たち from SAITAMA」で、吉田恵輔監督の『犬猿』(18)が上映され、Q&Aが行われた。
同作は、まじめな弟と粗暴な兄、頭脳明せきでしっかり者だが太った姉と美ぼうと若さだけで勝負する妹、2組のきょうだいが織り成す愛憎エンターテインメント。「僕にはお姉ちゃんがいて、異性では感じないであろう、同性のきょうだいの嫉妬をまずやりたかった」という思いから脚本を執筆した吉田監督のオリジナル作品だ。
窪田正孝、新井浩文、お笑いコンビ「ニッチェ」の江上敬子、筧美和子の主要キャストは、プロデューサーに提出した企画書の想定通り。もともとは兄弟のみを想定していたが、「ディープな兄弟の話だと、男くさいものになる。僕は女の子が好きなので、姉妹を入れてみた」と冗談交じりに意図を明かした。
キャスティングはまず、「僕の趣味で、その年代でうまいと思っている」という窪田と新井が決定。そこに「飛び道具」と評した映画初出演の江上と、グラビアのイメージが強い筧を加えた。
「江上さんは、若い頃の藤山直美さんのイメージで、本当にそっくり。ふだんコントをやっているから芝居も基本的にできるし、はまるんじゃないかなと。ダメだったら、ほかに誰がいるんだろうというくらいでした。筧ちゃんはよく下手っぴと言われるけれど、ポテンシャルはあるから引っ張られてバランスが取れるんじゃないかと思った」
『ばしゃ馬さんとビッグマウス』『麦子さんと』(ともに13)などオリジナルで勝負している印象が強いが、「僕は商売上手なんです」とニヤリ。その上で、演出に対するこだわりを聞かれると、独特の持論を展開した。
「基本的に、うまい人をキャスティングした時点で半分は勝った気持ちになる。役者にはまず、自由にやってもらう。こんなふうにやってと言ってもイメージ通りのままだけれど、好きにやってもらって意外な良さが見つかると、それは俺の手柄になるから。言い間違いや滑舌が悪いのも全然OK。もともと照明と撮影出身なので、撮る方に力を入れています」
観客の中には本作の鑑賞は3回目、5回目という熱心なファンもいて、終始ご機嫌の吉田監督。最も影響を受けたという漫画家・新井英樹原作の初映画化となる最新作『愛しのアイリーン』が9月14日に公開される。「相当変な映画ですが、自信作です」としっかりPRしていた。