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【デイリーニュース】Vol.10 『ダブル・ライフ』余園園監督、松岡眞吾、古川博巳 Q&A
日本で映画を学びたいと留学!役者を唸らせた余監督のこだわり
左から余園園監督、松岡眞吾、古川博巳『ダブル・ライフ』
本映画祭での上映がワールド・プレミアとなる『ダブル・ライフ』は、満たされない思いをうっすら抱える妻がレンタル夫にハマっていく姿を描く。身体コミュニケーションを通じて浮かび上がっていくヒロインの心の変化を鋭く描いたのは、中国から日本に留学中の余園園監督だ。
余は「北京電影学院」卒業後、日本で映画を学びたいと考え、独学で日本語を習得し、早稲田大学での日本語プログラムに1年間参加。その後、東京ビジュアルアーツ映画学科(現映像学科)と立教大学大学院で映像を学んだ異色の経歴だ。大学院では万田邦敏教授の指導の下、修了制作作品として初の長編映画を完成させた。
「北京ではシナリオを勉強していましたが、是枝裕和監督の『誰も知らない』(04)を見て、今まで見たことがない映画だと思い、日本に興味を持ちました。日本映画には静かな雰囲気があって、自分には合っている。最初は日本映画を研究するつもりでいたのですが、映画を撮れて、よかった」と語る。
本作は、一緒に行くはずだった身体に関するワークショップを夫(古川博巳)にキャンセルされた妻の詩織(菊地敦子)が主人公。代行業の淳之介(松岡眞吾)に夫役を依頼したところ、すっかり気に入ってしまい、夫に内緒でアパートを借り、彼との疑似夫婦生活を始めていく……。
「最初に企画書を書いた時は、レンタルされる側を主人公に撮るつもりでした。それで、10分の短編を撮ってみたのですが、万田先生からは『レンタルする側から撮ってみたら』とのアドバイスを受け、書き直したらうまくいきました」と余監督。環境音を効果的に使っているが、これは深田晃司監督の『本気のしるし』を参考にしたという。
余監督の熱心さについては、レンタル夫役の松岡もこう語る。
「部屋に伺った時は書棚に日本映画の本がいっぱいあって、脚本も監督自身が全部、日本語で書かれている。すごいなと思いました。監督とは撮影前も撮影中も何度も話し合いました。話を聞いてくれる部分もたくさんありましたが、同じくらい絶対に曲げないところも(笑)。頑固でもあるんです」。
夫役の古川も「松岡さんが言っていた通りで、『これをやりたい』という気持ちが強く、頑固さはものすごい。『中国の人だから、こう』というのではなく、余園園すげえな、という感じです(笑)。この姿勢を日本人のスタッフも学んで欲しいですね」と話す。
一連の頑固発言には、余監督も苦笑い。Q&Aではうつむき加減で話し、内気そうに見えるが、日本で映画を学びたいという思いを貫いたことでも分かる通り、映画への熱量はものすごく、その意思も強いようだ。
『ダブル・ライフ』の次回上映は、7月23日(土)17時半から映像ホールで行われ、ゲストによるQ&Aも予定されている。オンライン配信は7月21日(木)10時から7月27日(水)23時まで。