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【デイリーニュース】Vol.22 特集「SKIPシティ同窓会」『あつい胸さわぎ』まつむらしんご監督トークイベント
30周年でまた呼んでもらえるよう頑張りたい
『あつい胸さわぎ』左から石原理衣、まつむらしんご監督
まつむらしんご監督は、大学院の卒業制作『ロマンス・ロード』が2013年の長編部門でSKIPシティアワードを受賞。その後、釜山国際映画祭にも出品されるなど注目されたが、7月21日(金)に映画祭20周年記念特集「SKIPシティ同窓会」で『あつい胸さわぎ』が上映されるまで10年を要した。「違うステージで戻ることができて、本当にうれしい。腐らずにやることが大事ですね」と感慨深げだ。
そもそも『ロマンス・ロード』は、「大学院に入ったのも30歳を過ぎてからで、奥さんにも迷惑をかけたので、これを撮って(監督を)やめると宣言した」という覚悟で挑んだ作品。ただ、「イレギュラーで国際映画祭に入選したら続けてもいい?と聞いて、藁をもすがる思いでここ(SKIPシティ)だけに応募しました」と言う。
SKIPシティアワードによって「いろいろな命がつながった」が、同賞による次回作への制作支援には企画提出が間に合わなかった。「メンタル的につらかった。思った以上の評価を受けて、もっといいものを、という実力以上の目標設定をしてしまい、それに見合うまで3年くらいかかってしまった」と振り返った。
その次回作となった17年『恋とさよならとハワイ』は、上海国際映画祭のアジア新人賞部門で脚本賞と撮影賞を受賞。台湾の台北金馬映画祭にも招待され、滞在した3日間で現地での配給が決まるという高い評価を受け、「自分の作品と相性がいい国で勝てばいい、と視野が広がった」と自信を深めた。
その後、「体感としては30本くらい企画がぽしゃった」という雌伏の期間を経て出合ったのが、演劇ユニット「iaku」の舞台「あつい胸さわぎ」だ。「あまりにも感動して劇団のホームページにメールをしたが返事はなく、違う舞台で(原作の)横山拓也さんのトークショーがある日を調べて出待ちをした」ほどの熱意で映画化権を獲得した。
港町に暮らす昭子と千夏の母子それぞれのほのかな恋模様と、千夏が乳がんに侵されていることを知り揺れ動く二人の心情をつむぐ。脚本は20年来の親交があり「尊敬しているし、全幅の信頼を置いている」髙橋泉氏に依頼。キャストもオーディションで選んだ千夏役の吉田美月喜のほか、常盤貴子、前田敦子、三浦誠己らにオファー。「予算があまり大きくないので、現実主義の僕はこのくらいかなというリストを先に挙げたら、プロデューサーからまずは第一志望のキャストのところにいきなさいと言われた。(そこで正式にオファーしたら)全員その通りになった。僕が一番驚いた」布陣がそろった。
しかも、「本当に凄い方ばかりで、僕を緊張させないようにしてくれた。今までやってきたイメージとそれほど変わらず、楽しく撮影ができた」と手応えをつかんだ。同作は今年1月に公開、まつむら監督にとっての商業映画デビュー作となり「ようやく名刺ができました」と相好を崩した。
既に次回作『ふまじめ通信』が完成し、今年公開予定。新作の企画も開発中で「今が本当に頑張り時。30周年でまた呼んでもらえるように頑張っていきたい」と決意表明した。