デイリーニュース
『タッカーとデールと不吉なヤツら』製作ロザンヌ・ミリケン、アルバート・クライチャックQ&A
「誤解からどんでもないことが起こってしまうスプラッター・ホラー・コメディ」
(左から)アルバート・クライチャック、ロザンヌ・ミリケン
森の中の崩れかけた小屋を購入したタッカーとデールは、小屋を修理して理想の別荘に作り変えようとしていた。同じ森にキャンプにやって来た大学生グループは、湖に落ちた仲間の女子学生を救助した2人を見て、彼女を誘拐したと勘違い。誤解が誤解を生んで学生たちは2人をサイコキラーだと思い込み、小屋に決死の攻撃を仕掛けるのだが――。『タッカーとデールと不吉なヤツら』は、誰も殺そうとしていないのに次々と死体が増えていく、オフビートなスプラッター・コメディ。
作品上映後のQ&Aには、プロデューサーのロザンヌ・ミリケン氏とアルバート・クライチャック氏が登壇した。プロデューサーとして、この作品にほれ込んだポイントは。
「カナダ人はダークなユーモアが好き。このジャンルの作品はそう多くはありませんが、とにかく脚本がよく書けていて、製作者側も俳優たちもみんなが気に入りました。スプラッター・ホラー・コメディですが、誤解やコミュニケーションの欠如からとんでもないことが起こってしまうという裏のストーリーもしっかりしています」(ミリケン)。
舞台はウエスト・ヴァージニア州だが、撮影はカナダのカルガリーで行ったという。
「6~7月に撮影したんですが、その1週間は雨や雪、雹、雷、晴天と、何でもありの天候でした(笑)。CGはほとんど使っていないので、俳優たちの安全には気を使いましたね。優秀なスタントチームがいましたが、森や湖で撮影し、蜂やネイルガン、炎などの危険なシーンもたくさんありましたから」(ミリケン)。
スプラッター・シーン満載のおバカなコメディのなかに、意外にもハートウォーミングかつ教訓的な隠し味もある。
「人は他人を外見で判断してしまいがちですが、この映画では一見怪しい“ヒルビリー(田舎者)”の2人ではなく、普通に見える大学生の方が加害者になるというところに皮肉が効いています」(クライチャック)。
「映画やテレビの影響で、いまだにヒルビリーに対する根強い偏見があります。でも、本当に怖いのは都会人のほうなのかもしれません」(ミリケン)。
関連企画「彩の国地域発信映画プロジェクト2011」開催
映画祭関連企画として、10月13日、「地域発信映画」の可能性を探るシンポジウム「彩の国地域発信映画プロジェクト2011」が開催された。映像立県を目指す埼玉県内の、映像作品による地域活性化の取り組み事例をあげながら、これまでの成果や今後の課題などが報告された。
まず紹介されたのは、新座市にキャンパスを構える立教大学と武蔵野銀行の「産学連携プロジェクト」。同校現代心理学部映像身体学科の学生が埼玉県のさまざまな魅力をデジタルハイビジョンで撮影、編集したシリーズ『彩の国 四季めぐり』が、現在埼玉高速鉄道(浦和美園駅~武蔵小杉駅間)の車内で放送されている。同校の佐藤一彦教授は、「いずれは収集した映像をアーカイブとして副次的に利用できるようにしたい」と話した。
埼玉県内には、映画・テレビなどの撮影を誘致、バックアップするフィルムコミッション(FC)が23団体あり、積極的な活動を行っている。県の観光課が運営する埼玉県ロケーションサービスの報告によると、県内における撮影件数は2005年の140件から2010年には345件まで伸びているという。最近では、今年12月公開の『聯合艦隊司令長官 山本五十六』の撮影がSKIPシティで行われている。
『群青』の今井乃梨子プロデューサー、
『重なり連なる』主演の北村美岬、池田千尋監督
シンポジウムではまた、埼玉県の魅力的な地域資源(食・伝統工芸・歴史など)をPRする県の映像プロジェクト〈コバトンTHEムービー2011〉として製作された短編2作品が上映された。『重なり連なる』(池田千尋監督)は深谷市で、『群青』(石川慶監督)は加須市でそれぞれ撮影されている。上映前には池田監督らが挨拶、埼玉県内のFCの魅力などを語った。
最後に、アニメーションを活用した地域活性化の事例として、秩父市を舞台設定モデルにしたアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』が紹介された。今年4月から6月までフジテレビの深夜枠で人気を博した同作の影響により、「聖地巡礼」として秩父を訪れるファンが急増。同市の観光課や商工会は、舞台探訪マップやバナーの制作、グッズの販売などで観光促進を図っている。10月9日に行われた龍勢祭の人出は例年の8~9万人から11万人に増えたが、地元でのグッズ販売や映像等の権利関係の徹底が今後の課題だという。