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【デイリーニュース】 vol.04 『彼女はひとり』中川奈月監督、福永朱梨、山中アラタ、中村優里 Q&A
自分の思っていることや寂しさを、うまく作品にはめられたと思います
(左から)『彼女はひとり』の中川奈月監督、福永朱梨、山中アラタ、中村優里
中川奈月監督の『彼女はひとり』は、国際コンペティションに出品された唯一の日本映画。自殺未遂を経験した女子高校生・澄子は、再び高校に通い始めるが、彼女を心配する人たちにあからさまに嫌な顔をしたり、同じ高校の女性教師と交際している幼馴染の秀明を恐喝したり、他人に対して攻撃的になっている。父親ともうまくいかず、しばしば現れる幽霊にも苦しめられるが、彼女の過去、そして心の奥にあるものは少しずつ明らかになっていく……。
本作は、中川監督が立教大学大学院映像身体学研究科の修了制作作品として制作し、その後、東京藝術大学大学院で学びながら完成させた自身初の長編作品だ。上映後のQ&Aには、脚本、編集も担当した中川監督、出演者の福永朱梨さん、山中アラタさん、中村優里さんが登壇した。
まず、ヒリヒリするような強烈なキャラクター、澄子のキャスティングについて、中川監督はこう話す。
「澄子役の福永さんは、オーディションの時からすでにこのイメージで役を作り込んできてくださって、『ヤバイな』と思いました(笑)。澄子のキャラクターをどう作っていくか悩んでいたんですが、福永さんなら任せられる、と。 映画を見て怖い印象を持たれた方が多いと思いますが、彼女は普段は全然違う顔で、にこやかで可愛い人です(笑)。撮影では、階段を駆けのぼるシーンで映っていない下の方から全力で走ったりと、嘘のない演技を全力でしていただき、絶対の信頼を置いていました」
その福永さんは、最初に脚本を読んだ時の印象をこう語る。
「澄子は、復讐をしたり、人に心を開かなかったりするけれど、助けを求めている不器用な人だと思います。どうにか救ってあげたい気持ちになりました」
澄子の父親を演じた山中さんは、「大変な境遇の娘を全力でサポートできないという闇を抱えた、難しい役でした。最初に読んだ時は、20代の若い女性がなんて脚本を書くんだ! と思いました。役者は自分ではない誰かを演じるものですが、監督は自分の書いた世界観をそのままさらけ出すもの。これを彼女が書いたということにびっくりしました」という。
サトコの幽霊を演じた中村さんは、「脚本を読んで、セリフがないのではじめは『しゃべれないんだ、どうしよう』と思ったんですが、サトコが出てくるシーンは逆に見えないものが見えているところに意味があるんだと思いました。彼女がどうしてそこに映っているのか、その意味を考えながら演じました」。
黒沢清監督が好きだという中川監督。本作の撮影は、黒沢作品も数多く手がけている芦澤明子さんだ。
「黒沢清監督に大きな影響を受けているのは間違いないです。脚本を書くときも、理想とするところに黒沢監督がいたんです。幽霊が出てくる不気味な空間を作ってみたかった。でもそれだけを目標に脚本を書くと、面白くない。 指導していただいた篠崎誠監督のアドバイスもあり、暴走していく女の子には感情的に力強いものが必要だと思って理由付けしていったんです。エモーショナルな部分、自分が思っていることや寂しさをうまくこの作品にはめられたと思っています。言いたいことをたくさん言ってしまって、演出する上でも感情がのったと思います」
会場には「ほんとにあった怖い話」シリーズ、『リング0 バースデイ』(00)などのホラー作品で知られ、黒沢監督とも交流の深い鶴田法男監督の姿も。鶴田監督は、「黒沢監督の作品よりも、人間を信じているというか、エモーショナルな作品だと感じました」と感想を話した。
中川監督が「賛否ある作品だと思いますが、ぜひ大勢の方に観ていただきたいと思います」という『彼女はひとり』。以降の上映は、7月16日(月・祝)21時からMOVIX川口、7月18日(水)11時00分から映像ホールでも行われる。18日の上映後にはQ&Aが行われ、中川監督と福永朱梨さん、