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【デイリーニュース】 vol.06 『ブリス、マイ・スウィート・ホーム』 ナウルズ・パギドポン監督 Q&A
主人公は監督自身! 異色の自撮りドキュメンタリー
『ブリス、マイ・スウィート・ホーム』のナウルズ・パギドポン監督
インターナショナル・プレミアとなった国際コンペティション部門の出品作『ブリス、マイ・スウィート・ホーム』は、拝金主義の現代を風刺した、“自撮り”ドキュメンタリーだ。監督は、アニメーターでもあるフィリピン出身のナウルズ・パギドポン。
主人公は監督自身。大学卒業後も故郷に戻らず、マルコス政権時代に建てられた「ブリス」と呼ばれる集合住宅に暮らしている。都会の自由を捨てられない彼の元に、母から実家に戻ってこないかとの連絡が入る……。社会風刺から始まり、自身のアイデンティティー探し、そして、自分と母との関係を見つめる家族ドラマへとストーリーが変化していく……。時折、インサートされるアニメも魅力的な作品だ。
「映画の制作は2013年からはじまりました。最初はフィクションを撮りたかったんです。ドキュメンタリーを撮る気はなかったけれど、マニラでドキュメンタリーワークショップを受けた時にこの映画のアイデアが生まれました。政府は経済成長をしているといいますが、私達の生活はどうなのか? という疑問を投げかけたかったんです。当時、私は落ち込んでいました。そんな自分を盛り立てて、作品を仕上げないといけない。自分に正直になって、メッセージを伝えるには、この形がいいと思いました」とパギドポン監督。
撮影にはアクションカムのGoProを使用し、ほぼすべての場面を監督自身が撮影している。「13年から、プランニングしていましたが、あるシーンでは、撮影がうまくいかず、もう一度撮り直したところもあります」。40分程度の作品にまとまったところで、韓国・仁川市で開催されたドキュメンタリー映画の企画のプレゼンテーションを行う「DOCS PORT INCHEON 2014」にてDOC SPIRIT AWARDを受賞。その賞金を資金とし、2017年に完成した。
家族との関係や自分自身のプライベートをさらけ出すことに抵抗がなかったか、と聞かれると、「仁川で見た作品には、個人的な作品がありました。自分を出すことで説得力が出るということが分かり、仁川での経験で勇気をもらいました」と明かした。ミンダナオ島で行われた映画祭のプレミア上映では、審査員賞、最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した。
母親をはじめ家族はまだ観ていないという。「母は私が日本に来て、何か映画を上映していることは知っています。ただ、中身が母や家族についてだとは思っていないでしょう」。現在、母校フィリピン大学のフィルム・インスティチュートに勤務しているというパギドポン監督。今後については「フィクションに挑戦したいし、ドキュメンタリーも撮りたい。大学に戻って、修士を取りたいです。いくつもプランがありますね」と語っていた。
『ブリス、マイ・スウィート・ホーム』の次回上映は、7月17日(火)18時30分からMOVIX川口、18日(水)14時30分から映像ホールで行われる。18日の回には上映後にQ&Aも行われ、ナウルズ・パギドポン監督が再登壇する予定。