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【デイリーニュース】 vol.09 『キュクロプス』 大庭功睦監督 Q&A
出発点はふと浮かんだイメージ、練り込まれたシナリオで描く復讐劇!
『キュクロプス』の大庭功睦監督
国内コンペティション長編部門の『キュクロプス』は、妻とその愛人とされる男を殺害したとされ服役していた男・篠原が、出所後に真犯人を知り復讐を誓うハードな人間ドラマだ。その真犯人を教えたのは、当時の事件を担当した刑事・松尾。この意外な冒頭から、登場人物の思惑が錯そうし、二転三転しながらさまざまな謎がつまびらかにされていく。
長編2作目となる大庭功睦監督は、脚本に最もこだわったという。発想の起点は、ふと頭に浮かんだ、主人公の篠原となる男が妻の霊と出会い泣いている姿のビジュアルイメージだった。
「その姿が心に焼き付いて、この男を書き留めておきたいと思ったんです。シナリオさえしっかりしていれば、どれだけお金がなくても何とか作品になるし、練り込むためには自分1人が頑張ればいいだけ。納得がいくまでビルドアップさせたことで、現場でも頼りになりました」
主演の池内万作は当初から想定しており、粘り強く交渉。結果的に決まったのは最後になったが、その他のキャスティングに関しては自前の“大庭メモ”によって佐藤貢三、杉山ひこひこら演技派の俳優を見いだした。
「助監督を10年以上やっている中で、芝居はうまいのに大人の事情や見た目のインパクトなどでダメだった、恵まれない実力のある俳優をオーディションでいっぱい見ました。その人たちをメモしていて、いつか自分が撮る時は出てもらいたいと思っていました」
「冒頭の15分がもたもたしていた」という厳しい意見の観客もおり、「そう思われたら、僕の作戦の失敗です」と苦笑する一幕も。しかし、作品の内容を知らずに夫に連れてこられたという女性客から、篠原が拾い重要な役割を担う犬の存在を絶賛されると、相好を崩した。
「予算はかかっていない中で、実は犬に一番かかっているんです。犬を褒められたのは初めて。最後に出して良かったあ」
その犬に託した思いも含め「希望を残せるものにしたかった」と強調する。
「自分では二転三転しているとは思っていないけれど、篠原は過去を清算しきったと思っています。皆さんも実人生の中でその都度、その都度清算されて生きていると思うので、この映画から何かを見つけていただければいい」
本作は、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭でも北海道知事賞と批評家賞をダブル受賞しており、本映画祭への出品でさらに注目度がアップしそう。「まずは箱(映画館)でかけられればいい」と謙虚な大庭監督だが、その先にはさらなる大きな目標を抱いている。
「商業映画を撮れるようになっていきたい。監督で飯が食えるようになったらなったで、映画文化の担い手としての責任も出てくるが、それを担える監督になりたいと思っている」
『キュクロプス』の次回上映は7月18日(水)17時30分から映像ホールで行われ、大庭監督のほか池内、佐藤、杉山らによるQ&Aも予定されている。