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【デイリーニュース】 vol.12 『あの群青の向こうへ』 廣賢一郎監督、瀬戸かほ、山口昂太郎(助監督)、菰田尚音(制作進行) Q&A
監督の情熱の下に集った仲間と作り上げた1作
左から廣賢一郎監督、瀬戸かほ(出演)、山口昂太郎(助監督)、菰田尚音(制作進行)
国内コンペティション長編部門の『あの群青の向こうへ』の舞台は、一生に1度だけ未来の自分から「ブルーメール」という手紙が届く世界。母親を突然事故で失った高校生のカガリと、母親との確執で家を飛び出した少女ユキが、幾多の現実にぶつかり、抗いながら東京を目指し生きる意味を見いだしていく。構想は廣賢一郎監督が映画監督を志し、もがいていた頃の気持ちが反映されている。
「映画監督になりたくて一生懸命努力はしているつもりなんだけれど、現実はうまくいかなくて深夜に散歩をしながら『僕は何をしているんだろう』と心配になることがあった。そんな時に未来の自分から『おまえは大丈夫だ。頑張れ』と手紙をもらえたら、もうひと踏ん張りできるんじゃないかと思ったんです」
大阪大学歯学部で学ぶ一方で、映像学校で3DCGなどを学びミュージックビデオ(MV)などを手掛けている異色のキャリア。とりわけ映画への情熱は別格のようで、ワールド・プレミアとなった上映後のQ&Aでは「こんなにたくさんの人に見てもらえてうれしい」という第一声に初々しさをのぞかせた。
同席した助監督の山口昂太郎と制作進行の菰田尚音は、大学の同級生。共に映像のことは一切勉強しておらず「ド素人」を自任するが、廣監督の情熱に引き込まれたと明かす。
山口は「映画は大好きで、廣くんの映画に対する熱情に魅かれ、お金もないしトラブルも多い中、必死で撮ろうとしている姿に何かをしてあげたかった」、菰田も「この映画に参加した経験で、映画の見方が180度変わった。これからも監督の1親友、1ファンとして応援し続けていきたい」と称え、厚い友情を感じさせた。
主演は、ユキ役に映画『ユリゴコロ』(17)や『東京喰種』(17)などに出演する若手女優の芋生悠、カガリ役に新人の中山優輝を抜てきした。
「ユキはかわいらしい女の子にしたくなかった。悔しいことがあってもめげない打たれ強さが欲しくて、その格好良さが芋生さんにあった。中山くんは出会いはたまたまだったけれど、一生懸命やりますからという姿勢がいいなと思った。冒険でしたけれどね」
2人は、その英断が奏功したといえる好演を見せている。今生きていることに悩み、どこか諦観を漂わせながらも、それぞれのある目標に向かって必死にあがく姿が印象的だ。そして、カガリがかつて付き合っていたサヤカを演じ、Q&Aに参加した瀬戸かほは、欄干に足をかけビルから飛び降りる自身のファーストシーンで廣監督に確固たる信頼を寄せたという。
「難しくて何回やってもうまくいかず諦めかけていた時、監督に『もう1回やらせて』と言ったら、『いつまでもやりましょう』と言ってくれた。それで、この監督は素晴らしいと思った次第です」
照れながらも満足げな表情を浮かべた廣監督も、スタッフとキャストへの感謝で締めくくった。
「ロケが本当に過酷で、完成したことが奇跡。山口と菰田には本当に感謝している。瀬戸さんもありがとうございました」
『あの群青の向こうへ』の次回上映は、7月17日(火)14時30分から映像ホールで行われ、廣監督によるQ&Aが予定されている。