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【デイリーニュース】 vol.15 短編②『口と拳』『凪』『あいつは、いつも寝てる。』 Q&A
身近なとこから着想を得て、それぞれが描いた高校生
(右から)『口と拳』の溝口道勇監督、塩川孝良(プロデューサー、出演)/『凪』の日高七海(出演)、川野邉修一監督、加藤園子(出演)/『あいつは、いつも寝てる。』の樽井隆広監督、魚住昇矢(出演)
国内コンペティション短編部門『短編②』は、風俗で働く女子高生と殴られ屋の男が惹かれあう『口と拳』、3年前に失踪した同級生をめぐるミステリアスなドラマ『凪』、授業中にいつも寝ている同級生の別の顔を見つける『あいつは、いつも寝てる。』の3作品。
上映後のQ&Aには、『口と拳』の溝口道勇監督と塩川孝良(プロデューサー、出演)、『凪』の川野邉修一監督と日高七海(出演)、加藤園子(出演)、『あいつは、いつも寝てる。』の樽井隆広監督、魚住昇矢(出演)が登壇した。
『口と拳』は、荒んだ家庭と風俗の仕事で息の詰まるような生活を送る茜が、殴られ屋の光夫と出会い、共に都会から抜け出し海に向かう一風変わったラブストーリーだ。
溝口監督は、「茜というJKの女の子を、光夫というホームレスの男があの空間から抜け出させる物語。バイクであの土地から逃げる2人を描きたかった」と話す。
監督とともに脚本を書き、光夫役で出演もしている塩川孝良は、「あの2人が今日一日何ができるかと考えたときに、海に行く、という案が浮かびました。自分自身もよく海に行こうと考えるから、それが作品に出たのかもしれません。光夫にとって茜は、自分と同じような問題を抱えている人。そういう2人だから認め合えるんだと思います」と説明する。殴られるシーンは、本当にやっているのかと思うほど真に迫っているが、「あれは当て振りで、音を後から入れているんです」と明かした。
失踪した高校時代の親友・美華子からの突然の電話に動揺するみずきが、警察に事情を話すうち、かつて彼女と交わした約束を思い出していく『凪』。失踪前、美華子は「完全失踪マニュアル」を読んでいる。
川野邉監督は「大学の時に、友人がこの本を持っていて、面白そうだと思って読んでみたんです。今回作品を作るにあたって未解決事件を探していくうちに、これを作品の大きなテーマとして扱うことにしました」と語る。作品のGL(ガールズラブ)的な雰囲気を指摘されると、「化粧するシーンや木の下のシーンなどは、カメラマンが寄って二人の空間を意識して作っていました」と説明。
みずきを演じた日高七海は「脚本を読んだ時にそれを感じることはなかったんですが、演出では『もっと近寄って』とよく言われましたし、出来上がった作品を見てみるとGLっぽいなと思います」。
美華子を演じた加藤園子は、「特にそういう指示は受けていませんし、ずっと長回しで撮っていてわからなかったですが、自然とそういう空間ができるような演出だったのかなと思います」と話した。
いつも寝ているクラスメイトの乾に興味を抱いた真喜子が、放課後密かに彼のあとをつけ、電磁パルス発生装置作りに没頭する姿を見つける『あいつは、いつも寝てる。』。
樽井監督は、「主演の魚住君は普段からよく寝る子で(笑)、何をして疲れて寝ているのかというところから始まり、何だったら面白いかを考えるなかで電磁パルスが浮かんだんです。ネットで調べてみると、本当かどうかわからないですけど『電磁パルスを作ってみた』というような記事が出ていて。スマホという情報が簡単に手に入るデバイスが世に出てきたことは、便利ではあるけれど危ないし問題なのかなと。共謀罪が成立して、ふとこういうものを作ってみただけでも罪で問われるのかということも考えました。彼は役者ではなく、同じ専門学校出身で、いつものままでいいから出てくれとお願いしました」と話す。
その魚住は、「自分は普段通りで、そこにカメラがあるだけという感じでした。自分を演じると言われてもわからないので、言われたことをそのままやればそれが自分だと思ってやりました」と初めての演技の感想を語った。
『短編②』の次回上映は、7月19日(木)17時30分から映像ホールで行われ、各作品の監督と出演者がQ&Aに再登壇する予定。