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【デイリーニュース】 vol.16 短編③『はりこみ』『東京彗星』『ふっかつのじゅもん』 Q&A
監督と役者が明かす映画製作の舞台裏
右から『はりこみ』の板垣雄亮監督、池田香織、鶴町憲/『東京彗星』の洞内広樹監督、大西利空、篠田諒、榎本“CHAMP”光永/『ふっかつのじゅもん』の白井太郎監督
国内コンペティション短編部門『短編③』は、ワンシチュエーションの会話劇『はりこみ』、彗星が東京を直撃する窮地で兄弟の絆を問う『東京彗星』、落ち目の元人気子役と新人マネージャーが自我をぶつけ合いながら新たな一歩を踏み出す『ふっかつのじゅもん』の3作品。コメディ、SF、人間ドラマと多彩なラインナップで、Q&Aは笑いの絶えない和やかな空気に包まれた。
劇団「殿様ランチ」代表の板垣雄亮監督が監督、脚本、出演の1人3役を兼ねた『はりこみ』は、狭い車内で張り込み中の刑事たちの会話が、あらゆる方向に飛び火し笑いを生む。だが、観客と一緒に鑑賞した板垣監督は「今日観たやつは、テンポが悪かったね」とボケ気味の感想を漏らし、共演の池田香織、鶴町憲に同意を求めた。
さらに、「(上映時間が)28分だから、一気にやっちゃおうかと思っていたら、いろんな角度から撮らせてくださいと言われて、同じことを3回もやっているんです。撮影は1時間で終わると思ったら、8時間くらいかかった」と納得していない様子。それでも、初監督作だけに「舞台と映像の違いを改めて感じた。舞台も映像も、僕たちは観ていただかないと成り立たない商売なので、常々魅力的な存在であり続けたいと思っている。それを肝に銘じてこれからもやっていきたい」と意欲を新たにした。
『東京彗星』は、短編の製作から配給までをサポートするスカラシップ「MOON CINEMA PROJECT」に選ばれた作品で、「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2018」の「Cinematic Tokyo」プログラムで東京都知事賞などを受賞。洞内広樹監督は、製作資金に関する質問に、「そのコンペで優勝した500万円と、脚本を書いてクランクイン前に自分の結婚式があり、ご祝儀をたくさんもらえたので、神さまが使えと言っていると思った。素晴らしい使い方ができました」と生々しい告白。さらに、本作の長編化を目指しており、「3億円必要なので、ビットコインでもうけて節税に困っている人はよろしくお願いします」と、本気とも冗談ともつかない発言で会場を沸かせた。
『ふっかつのじゅもん』は、白井太郎監督の日大芸術学部の卒業制作作品。同級生の俳優・佐伯亮のほか、林田さくらこ、豊原功補、黒島結菜、草刈民代ら豪華なキャストが並ぶ。白井監督は、短編と長編の違いについて聞かれると「長編にメリットはあまり感じない。何を言っているかが大事で、プロが作る商業映画は90分、120分であっていいと思うけれど、同じことを言っているのであれば短い方がいい」と持論を展開。そして、「キャスティングやロケ地選びなどには満足しているが、演出や脚本には至らない点がある。このお二方(板垣と洞内両監督)と一緒に作れば補えるんじゃないかと思った。監督ではない立場で次を作ってみたいと思った」と、映画祭ならではの出会いの利点を強調した。
『東京彗星』に主演、『ふっかつのじゅもん』にも1シーン出演している大西利空は、「2作品とも楽しかった。『東京彗星』はお兄ちゃんを捜すためにいろいろなところに行けたし、『ふっかつのじゅもん』は1日だけだったけれど、終わった後に佐伯さんといろんな話ができて楽しかった」と笑顔。だが、『東京彗星』で兄役を演じた篠田諒に「撮影の1日目に、机の上にあった味のりを利空が休憩中にずっと食べていて、スタッフに注意されていた。この子は味のりが好きなんだという、そのインパクトが強かった」と暴露され、しきりに照れていた。
『短編③』の次回上映は、7月20日(金)午前11時から行われ、Q&Aも予定されている。