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【デイリーニュース】 vol.19 『あの木が邪魔で』ハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン監督 グリマール・ヨンソン プロデューサー Q&A
隣人の理不尽なクレームからトラブルがエスカレートするブラックコメディ
(左から)『あの木が邪魔で』のハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン監督、グリマール・ヨンソン プロデューサー
国際コンペティション部門出品作の『あの木が邪魔で』は、庭の木が隣家のデッキに影を落とすという些細なことが原因で、ご近所トラブルがエスカレートするブラックなホームドラマだ。本映画祭での上映がジャパン・プレミアとなった。
元カノとのセックス映像を見ていたところを妻に目撃され、家を追い出されたグラフィックデザイナーのアトリ。仕方なく実家に転がり込むと、老いた両親は、隣家から「庭の木のせいで自分の家のデッキが陰る」とクレームを受けていた。そんな最中、飼い猫が姿を消す。母親は隣人の仕業ではないかと疑い始め、トラブルはどんどん大きくなっていく……。
本作は、2017年のヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門でワールド・プレミアされた後、世界中の映画祭で多数受賞。ブラック・コメディとして売り出された本国アイスランドでは、同国のアカデミー賞で作品賞、監督賞を含む7部門で賞に輝き、米アカデミー賞外国語映画賞代表作品にも選ばれた。
監督はレイキャビック出身で、米コロンビア大学で学び、2012年にヴァラエティ紙で「最も期待される10人のヨーロッパの監督」として紹介された新鋭ハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン。「木をめぐる隣人トラブルの事件が実際にあって、それをヒントにしましたが、ストーリー自体はまったくのオリジナルです」と監督。
日本でも昨今、近隣トラブルがニュースになっていることから、観客からは「面白く見ました。ブラック・コメディなのかなと思って見始めると、最後の方は怖かった」との感想が出ると、「この夫婦は中の上くらいの生活レベルで、根本的な問題はないんです。むしろ、自ら問題を起こしている。これはアイスランドでの話ですが、どこでも起こりうる普遍的な話。戦争だって、そうだと思うんです。そういったことも意識しています。僕なりの反戦映画です」と話した。
映画は、アイスランドを始め、デンマーク、ポーランド、ドイツとの合作。グリマール・ヨンソン プロデューサーは、「ヨーロッパの映画製作ではよくある形です。アイスランドでは政府からの多額の援助があるのですが、ほかの国からもできるだけ出資を求めて、撮影に入りたかったのです。撮影監督はポーランド人ですし、ポストプロダクションはデンマークで行うなど優秀な人材を集めました」と明かした。
2人は次回作でもタッグを組むそうで、ヨンソン プロデューサーは、「飛行機恐怖症をテーマにしたロマンティック・コメディですが、サイコスリラーの要素もあります」と話していた。
『あの木が邪魔で』は次回、7月20日(金)21時からMOVIX川口、7月21日(土)17時30分から映像ホールで上映される。21日の回には上映後にQ&Aも行われ、シーグルズソン監督&ヨンソン プロデューサーが再登壇する予定。