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【デイリーニュース】 vol.24 『スポットライト』ヴィクトリア・イサコヴァ Q&A
刑務所の看守と囚人という立場を越えた友情を育む「おとぎ話」
『スポットライト』出演俳優のヴィクトリア・イサコヴァ
国際コンペティション部門出品作の『スポットライト』は、ロシア発の監獄オペラエンターテインメントだ。本映画祭での上映がアジアン・プレミアとなった。監督と脚本のキリル・プレトニョフは、舞台でキャリアを積み、数多くの映画、テレビシリーズに出演する俳優で、これが長編監督デビュー作となった。
ロシアの女性刑務所の厳しい看守長のアレフチナ(インガ・オゴルディナ)は、人前では歌ったことはないが、実はオペラ歌手も羨む素晴らしい歌唱力の持ち主。ある日、刑務所内で歌唱する姿がスマートフォンで盗撮され、それがインターネットで公開されると、一躍、時の人に。モスクワのテレビ局の人気司会者の目にも止まり、オーディション番組への出演をオファーされる。最初は嫌がるアレフチナだったが、音楽学校出身の囚人スター(ヴィクトリア・イサコヴァ)から歌唱指導を受けるようになり……。
Q&Aには、看守と囚人という立場を越えた友情を育むスター役を演じたヴィクトリア・イサコヴァが登壇。2016年のカンヌ映画祭ある視点部門に出品された『The Student』(16)でも主演を務めたロシアの人気女優だ。
スターは、夫殺しの罪で懲役3年の刑に処せられ、何度も脱獄を図ったという設定。観客から「殺人の罪で3年は軽いのでは。脱獄を考えるよりも、おとなしく刑期を全うした方がよかったのでは?」と聞かれると、「刑務所に入る前に彼女の身に何が起こったのかについては、監督と話し合いました。確かに3年間の刑はありえないですね。実際は、もっと重い刑が課せられると思いますが、情状酌量されることがあって、短い刑期になったのです」と説明した。
刑務所を舞台にした映画出演は2度目だそうで、「実際の刑務所がどういうものかは知っていました。現実にこういう刑務所があると思って欲しくはありません」。ただ、似たような話はイギリスの女性刑務所で実際に起きたそうで、「監督がロシアの現実に見合ったものとして描きました。本当にこういう話があるとは思わないけれども、非常に大事なものが描かれていると思います。この映画のジャンルが何か? と聞かれたら、私はおとぎ話だと答えるでしょう」と話した。
役の魅力について聞かれると、「スターは何がやりたいかをはっきり分かっています。それが魅力です。それを実現させるために、最後までその夢に突き進むのです。私自身にとって、何がやりたいのか見極めることは、大きな問題です。ですが、私の2歳半の娘は、自分の夢が何かを知っています。娘がこのまま夢を持って、成長してくれたら素晴らしいなと思います」と話していた。
ロシア映画界は一時、盛んではない時期もあったそうだが、今は活況を見せているという。本作は多くの観客に受け入れられたというが、評論家の間では賛否両論だったとも。特に物議を醸したのは、主要キャラクターが総出演で歌を歌うミュージカル映像が流れるエンドロールだという。「監督は最初のうちは一生懸命説明していましたが、最後は『好きなふうに考えてくれ』と言っていました」と明かしていた。