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【デイリーニュース】vol.03 『明ける夜に』堀内友貴監督、五十嵐諒、花純あやの、としお理歩 Q&A
何かが“明けた”その先は? 想像ふくらむ群像劇
左から堀内友貴監督、としお理歩、花純あやの、五十嵐諒『明ける夜に』
国内コンペティション長編部門出品作『明ける夜に』は、夏の終わりの一夜を過ごす若者たちを描く群像劇。急遽面接の予定がなくなった就活生の山ノ辺とキミ、コンビニのバイト仲間キョーコに思いを告白しようとする健斗、野球部のマネージャーだった凛子にどうしても会いたいと電話をかける元高校球児の秀一。それぞれのストーリーがパラレルに展開し、やがて近づいていく――。
作品上映後のQ&Aには、東放学園映画専門学校映画制作科在学中に本作を完成させた堀内友貴監督とキャストのとしお理歩さん、花純あやのさん、五十嵐諒さんが登壇した。
Q&Aで客席からまず出た質問は、劇中に登場する、砂浜に頭だけ出して埋まっている謎の男のこと。作品を見た人なら誰もが知りたがるだろう彼の正体について、堀内監督は、「僕と演じて下さった松本(高士)さんの間では、こういう人という答えを一応決めてあるんですが、各々受け止めていただけたらと思うので、明言は避けたいと思います」とのこと。ちなみに最後に彼と共に登場するもう一人の謎の男は、堀内監督本人が演じているそうだ。
当初のタイトルは『夏が明ける夜に』だったが、最終的に現タイトルに落ち着いた。編集し終わって完成した時にタイトルをいろいろ考えて、“夏が”と名づけずに、夏に限らずにいろんなものが明けるという開いた意味にしたいと思いました」
面接を前にお酒を飲み出すキミや、不倫相手を引き留めようとする凛子など、登場するのは濃いキャラクターばかりだが、脚本は当て書きが多かったのだとか。
「キミ役のあやのさんは学校の授業で出会ったんですけど、(劇中にあるように)ぽろっと関西弁が出たり、実際にメイク落としを始めたこともあって、その感じのままに映画に出てもらえたらと思って、脚本を当て書きしました。山ノ辺も僕が前に撮った自主映画に出演してくださった五十嵐さんをイメージして、モラトリアムから抜けたいという自分の思いを重ねながら書いた感じです」
実際にキミ役を演じた花純さんは、「ほぼ当て書きしていただいて、そのままでいいよと言ってくださったのと、その中に監督の思いや内側が投影されていたりするので、そこを重ねながら演じるのが楽しかったです。お客さんに対してどう見えてもいいよ、というスタンスで演出をつけていただきました。一応私たちの中には答えはありますが、どう見ていただいても大丈夫です」。
凛子を演じたとしおさんは、「いきなり包丁を持って登場するというインパクトの強い役。凛子自身が悩みながら、大変なこともありながら前に進もうとしている姿を見て、皆さんに何か感じてもらったり、共感できるものがあったら嬉しいなと思いながら演じました」。
山ノ辺役の五十嵐さんは、「みんなのキャラクターが濃いので、僕はそれをしっかり受け止めて、反響させられればいいなと。僕は見た目に強烈なインパクトがあるわけではない。だからこそ役者として活きるのは、皆さんを活かすところかなと思っていて、これは僕しかできないなと思いましたし、やりがいを感じました。語りすぎないところが堀内監督の作品の良さでもあるので、見る人がそれぞれの中でいろいろな捉え方をしてもらえたら嬉しいです。1回見ただけじゃわからない部分もあるので、もう1回見てください(笑)」。
昨年9月の撮影時は天候に泣かされ、海辺のシーンは1日で撮り切ったというハードスケジュール。様々な困難を乗り越えて完成させた作品を、堀内監督は今回初めて大きなスクリーンで見たという。
「僕が部屋で一人で考えていたものが、いろいろな人の力を借りてこうして映像になって、それをこんなに多くの人に見てもらえるということ自体がとても素敵なことだと思いました。今日見ていただいて本当にありがとうございます」
『明ける夜に』の次回上映は7月20日(水)10時30分から多目的ホールで行われ、ゲストによるQ&Aも予定されている。オンライン配信は7月21日(木)10時から7月27日(水)23時まで。