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【デイリーニュース】vol.07 『エフラートゥン』ジュネイト・カラクシュ監督、ヤームル・カールタル・カラクシュ(編集、VFXアドバイザー、アニメーション) Q&A

盲目の時計修理技師がヒロイン イマジネーション豊かなトルコ発のラブロマンス

左から『エフラートゥン』ジュネイト・カラクシュ監督、ヤームル・カールタル・カラクシュ(編集、VFXアドバイザー、アニメーション)

 

国際コンペティション出品作『エフラートゥン』(トルコ)は、盲目の時計修理の女性エフラートゥンと写真が趣味の男オフラズの出会いと別れを描く切ないラブロマンスだ。これがジャパン・プレミアになる。作品の上映後、ジュネイト・カラクシュ監督と編集、VFXアドバイザー、アニメーションを担当した妻のヤームル・カールタル・カラクシュがQ&Aを行った。

 

ジュネイト監督は1980年9月、トルコ・アンカラ生まれの42歳。大学ではラジオ、テレビ、映画を専攻。2013年には短編映画が世界のショートフィルム映画祭で数々の賞を獲得し、これが念願の長編デビュー作となる。

 

冒頭から映像が美しい。セピアがかった色彩、時折、盲目のヒロインのイマジネーションをアニメーションで表現。視覚障害者の女性が時計修理技師を営むという設定だが、これには古代ギリシャの哲学者プラトンのイデア論をヒントにしいる。つまり、「見えるものとは何か?」という問いだ。

 

「彼女は形と声でモノを認識しているのです。彼女の父は、盲目の娘が人生を生きられるように、小さい頃から時計の修理の技術を教えてきました。私自身、視覚障害者も、そうでない人と同じようにできると伝えたかったし、実際、オスマン帝国時代にも、盲目の時計修理技師がいたことが分かっています」(ジュネイト・カラクシュ監督)

 

劇中には、エフラートゥンのイマジナリーフレンドとして、アニメーションの不死鳥が象徴的な存在として描かれる。そのデザインは数カ月間かけて練り上げた。

 

「不死鳥は世界の神話にも登場していますが、トルコの神話にもあります。本来は炎が燃え上がる羽根を持っていますが、私たちの不死鳥は薄紫をメインにしています。それによって、ヒロインの夢、希望が羽ばたくというイメージにしました」(ヤームル・カールタル・カラクシュ)

 

主演の2人にはトルコのトップ俳優を起用しているが、製作から完成までの道のりは平坦ではなかった。クランクアップして2日後には、コロナでのロックダウンにも直面した。

 

「製作費集めには大変苦労しました。トルコ共和国の文化観光省映画総局からも融資を受けましたが、大半は自分の貯金です。ある学術関係者からは日本円での融資も受けました。だから、日本の皆さんも資金面で貢献してくださっているんですよ」(ジュネイト監督)

 

映画製作のパートーナーとして、私生活では妻として支えてきたヤームル・カールタル・カラクシュも「彼のことを一生懸命できる限り理解しようと努め、ディテールを詰めていきました。コロナ禍では経済的な困難で停滞し、どうしていいか分からないこともありましたが、最終的に彼が望むような形で映画を完成できたことは大きな喜びです」と話す。

 

ジャパンマネーも製作の一助になったという作品に、司会者が「配給会社の方がいらっしゃったら、日本での上映も検討してほしい」と話すと、会場からは大きな拍手も。カラクシュ夫妻も笑みを浮かべていた。

 

エフラートゥン』の次回上映は7月20日(木)17時30分から多目的ホールで行われ、ゲストによるQ&Aも予定されている。オンライン配信は7月22日(土)10時から7月26日(水)23時まで。


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