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【デイリーニュース】Vol.11 『僕が見た夢』エルナン・オリヴェラ プロダクション・ディレクター Q&A
これは、コミュニケーションと共感についての映画
『僕が見た夢』エルナン・オリヴェラ プロダクション・ディレクター
国際コンペティション部門出品作『僕が見た夢』は、『家(うち)へ帰ろう』で本映画祭2018年の観客賞を受賞したアルゼンチンのパブロ・ソラルス監督の最新作。7月17日(月・祝)17時から多目的ホールでの上映後、エルナン・オリヴェラ プロダクション・ディレクターが登壇し、この映画が作られた背景などをQ&Aにて語った。
『僕が見た夢』は、少年の成長物語。芝居を嫌う母の手前、演技クラスに通っていることを言いだせないフェリペ少年は、ある日、そのワークショップのなかで亡き父が俳優だったこと、そして彼には母以外のパートナーがいたことを知らされる。さまざまに葛藤しながら、芝居に面白さを見出したフェリペは、先生に勧められた映画のオーディションを母に内緒で受けにいく。オーディションが町で行われるため、彼は疎遠になっていた父方の祖母を頼り、訪ねていく――。
この作品はフェリペを演じた12歳のルーカス・フェロの創造力から生まれた。ベースとなったのは、彼がソラルス監督のワークショップで生み出した物語。ルーカス少年は、友だちに乞われて渋々参加したウルグアイの小さな町ラ・パロマで開催されたワークショップの子どもクラスで、ライティングと演技を学んだ。
「ルーカスが、ライティングのワークショップに参加したときの即興が、ソラルス監督を刺激して映画へとつながりました」とエルナン・オリヴェラ プロダクション・ディレクター。
ちなみにプロダクション・ディレクターとは、フィルム製作のすべてのプロセスに関わる日本では耳馴染みのないポジション。アルゼンチンとウルグアイの共同製作作品である本作では、撮影中はウルグアイの制作会社ムータンテシネのラインプロデューサーとして、その後はエグゼクティブ・プロデューサーとともに全体を管理する立場で携わった。
ソラルス監督が行ったワークショップと映画の内容は、密接にリンクしている。映画に登場する、沈黙のエクササイズなど、さまざまなエクササイズもワークショップで実際に行われたもの。演劇クラスの先生を演じているのもソラルス監督自身。この映画に登場するほとんどの人物が、このワークショップの参加者で、演技は未経験だったラ・パロマの住人だという。
そんなワークショップで見出された“俳優たち”の演技をリードするのは、5人のプロの俳優だ。話し始めたら止まらないフェリペの祖母を演じたミレラ・パスクアルもその一人。
「パスクアルさんは、多くの代表作を持つウルグアイの至宝です。大ヒットした『ウィスキー』(2003)は、東京国際映画祭でグランプリを受賞するなど、多くの映画祭で評価を得ました。そんな方と一緒に仕事ができたことを、本当に光栄に思っています」
そんな至宝ミレラ・パスクアルに、ルーカスが挑む“沈黙のエクササイズ”は、本作の見どころの一つといえる。
「おばあさんはぺらぺらと喋りますが、実は何も語ってはおらず、ただ不安だと言っているだけ。そんなおばあさんはフェリペが言い出した沈黙ゲームによって初めて、長年持て余していた自らの痛みにコネクトできた。これは、コミュニケーションと共感についての映画。フェリペはお母さんとうまくコミュニケーションできない。またお母さんも夫に愛人がいたときの気持ちをうまく言葉にできない。そんなコミュニケーションについて、演技について、恐怖について、沈黙することについて描こうとする映画なのだと思います」
本作は成長期だったルーカスがどんどん成長してしまうため、「早く撮りあげなければならなかった」。留年しているという設定も「小学生なのに、もっと歳が上に見えるようになってしまったので、勉強以外のことに精を出したために留年したということにした」のだそう。そんなルーカスは、本作への出演をきっかけに演技に目覚め、芝居の勉強を始めたのだとか。ここでも映画と現実がリンクする。
『僕が見た夢』の次回上映は、7月20日(木)14時20分から映像ホールで行われ、エルナン・オリヴェラ プロダクション・ディレクターによるQ&Aも予定されている。オンライン配信は7月22日(土)10時から7月26日(水)23時まで。