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【デイリーニュース】Vol.02 『シックス・ウィークス』アンナ・ヴァーギー(編集) Q&A

チャンスをあきらめないために…卓球少女の選択

シックス・ウィークス』編集のアンナ・ヴァーギー

 

国際コンペティションの上映1本目として16日の10時30分から多目的ホールで上映されたハンガリー映画『シックス・ウィークス』。すでにエストニアのタリン・ブラックナイト映画祭ジャストフィルム(青少年映画)部門でグランプリを獲得するなど、評価の高い作品だ。

 

高校生のゾフィは卓球チームに属し、有力選手として将来オリンピックも狙えると期待されている。が、予期せぬ妊娠が判明。中絶ができる時期を過ぎていたため、ゾフィは出産して子どもを養子に出すことを決意する。精神的に不安定な母、幼い妹と暮らすゾフィは、自分の未来をつかむためにも卓球選手として成績を残さなくてはいけないと考えたのだ。

 

ハンガリーには、養子縁組を結んだあとでも、出産から6週間以内に実母が気持ちを変えた場合には養子縁組を解消できるという制度がある。タイトルの「シックス・ウィークス」はそれを指すもの。

 

Q&Aには本作の編集を担当したアンナ・ヴァーギーが登壇。ノエミ・ヴェロニカ・サコニー監督と主演女優カタリン・ロマーンは来日がかなわなかったが、2人並んでビデオメッセージを寄せてくれた。

 

「監督のノエミ・サコニーです。本日は『シックス・ウィークス』の上映に来ていただきありがとうございます。今回、私は第一子の出産を控えているため残念ながら日本に行くことができません。けれど私の親友であり、この映画の編集者であるアンナが私たちの代わりに皆さんのご質問にお答えします。アンナはこの企画を最初から私と一緒に進めてきたので、すべてを知っているわけです。何でもお答えしますので聞いてください」。

 

「カタリン・ロマーンです。日本は私にとって特別な思いのある国ですので、この映画祭で『シックス・ウィークス』が上映されることはとても喜んでいます」とゾフィ役のカタリンさんは日本語で挨拶した。現在、日本語と日本文化を学ぶ学生である彼女は、本作が初演技。今回はテレビドラマの撮影中で来日できなかったという。

 

アンナ・ヴァーギーは、2人のメッセージを「今初めて見ました」と嬉しそうに見守る。

 

「私と監督はずっと友だちで、私たちはこの作品に入る前からノエミ監督の家族のことをテーマにしたドキュメンタリーを作り続けています。それは監督のお母様についての、とてもプライベートなドキュメンタリー。彼女は以前の結婚で子どもを産んだのですが、その子の親権を別れた父親に渡したのだそうです。ノエミ監督はそれを知らずに育ちました。母親が自分の産んだ子どもを手放す気持ちはどんなものなのか、それがこのドキュメンタリーのテーマです。ノエミ監督は、このプライベートな作品とは別のドキュメンタリーも企画していました。それが本作のもとになった企画です」

 

ハンガリーでは、中絶や養子縁組などについての話題はいまだタブー視されており、“シックス・ウィークス”のシステムもあまり知られていないという。中絶も、養子に出すことも、それを止めることもできる社会的な制度があることをもっと広く知ってもらうため、ノエミ監督らはまずドキュメンタリーを企画した。

 

「ノエミ監督夫妻は、ドキュメンタリー出身。5年ほど前からリサーチを進め、子どもを手放した親や養子縁組をした養父母、システムの担当者や社会学者などに会ってきました。しかし、実際にドキュメンタリーを作るとなると、当事者に接近して撮っていくことになります。すると実の親や、養父母が行った自由で主体的であるべきその決定に影響を与えてしまうのではないかという懸念が生まれました。そこで、私たちはこのテーマをドキュメンタリーではなくて劇映画にすることにしたのです」

 

望まない妊娠をする少女について描いた映画は各国でいろいろと作られているが、多くは妊娠を知り、悩み、まずは中絶をと考えるが…という展開になることが多い。しかし本作は、主人公が養子縁組をすると決めたあとから始まる。

 

「ゾフィが妊娠を知ったときにはもう中絶できる時期を過ぎていました。彼女は卓球にすべてをかけています。激しい練習のために生理が止まっていると勘違いしたうえ、胎児の位置が見えにくい場所だったこともあり、妊娠に気がつかなかった。つまり、出産するという選択しかないゾフィですが、赤ん坊を自分で育てるか、養子に出すかと選択することは可能なわけです。そしてゾフィは自分自身でその決定を下します。周囲からのプレッシャーや社会的な圧力で選択を強いられたのではなく、自分で決めるのです」

 

望まない妊娠をした少女を描く映画はいろいろあれど、中絶を社会的に許さない国もあれば、社会的には許可しているが倫理的に望ましくはないとしている国や文化もある。中絶せず、またはできずに出産する映画では、結果として母になってよかった、それは女の幸せだったと気づいたり、どうにか中絶できた少女たちもそれを一生のトラウマとしなければ許されない、という結末のものが多いように思う。

 

しかし本作で用意されたエンディングは違う。これは監督ではない3人目の脚本家のアイデアなのだそう。

 

アンナ・ヴァーギーは、編集のみならず、企画から脚本、撮影現場にも立ち会い、エキストラとして出演もしたという。

 

「編集者として私自身の出演部分はカットしましたが(笑)。監督も編集にこだわる人なので、2人で編集室にこもって6カ月かけて編集しました。どのシーンのアイデアを誰が出したか、細かくは覚えていませんが、監督とは喧嘩もしながら協力して作り上げたことは確かです。皆さんどうぞお楽しみください」

 

シックス・ウィークス』の次回上映は7月19日(水)13時50分から映像ホールで行われ、ゲストによるQ&Aも予定されている。オンライン配信は7月22日(土)10時から7月26日(水)23時まで。


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