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【デイリーニュース】Vol.05 『繕い合う・こと』長屋和彰監督、黒住尚生、菊池豪、大沢真一郎プロデューサー Q&A
金継ぎで“つなげる”初監督作品
左から『繕い合う・こと』の長屋和彰監督、黒住尚生、菊池豪、大沢真一郎プロデューサー
国内コンペティション長編部門出品作『繕い合う・こと』は、これまで俳優として『カメラを止めるな!』などの作品に参加してきた長屋和彰が初監督だけでなく主演、脚本、編集を務めた作品。亡き父の跡を継いで金継ぎ師となった兄と、そんな兄に対して複雑な思いを抱えながら年末に帰省してきた弟の数日間の物語だ。作品の上映後、長屋和彰監督、出演の黒住尚生、菊池豪、大沢真一郎が登壇し、Q&Aを行った。
主人公・護の金継ぎ師というちょっと珍しい仕事について、長屋監督はこう話す。
「主人公に日本の伝統的な技術を仕事として持たせたいと考えていたんですが、なかなかピンとくるものがありませんでした。そんなとき連れて行ってもらった映画祭で外国の監督が撮った金継ぎのドキュメンタリーを観て、これなら“つなげる”とか“修復する”という物語にも重なると思ったんです」
長屋監督は、初監督作品ながら主演などいくつもの役割をこなしている。
「役者と監督では脳の使い方が全然違うから大変だよと言われていたのに軽く考えていたら、本当にそうで。監督として全体を見ないといけないし、自分の役のことだけを考えていられなかった。自分のお芝居が拙すぎて、編集でなるべく自分を削れないか考えたんですけど、主演なので削れないし。役者と監督の使い分けが本当に難しかったですね」
そんな監督が協力を求めたのは、ワークショップで出会い、本作に出演もしている大沢真一郎プロデューサー。
「普段冷静な長屋監督がよほどテンパっていたのか移動中に携帯をなくしたり、らしくなくて大変そうでしたけど、今回は監督が信頼する元々親交のある方々に出ていただいたこともあって、みんなで盛り上げてくださって。ある日、監督から映画を撮りたいから手伝ってと言われて何の気なしに“いいよ”と言ったら、こんな夢のような場所に連れてきてくれました」
護の弟、幹を演じた黒住尚生も、同じワークショップの出身だという。
「初監督でわからないことがたくさんある中、キャスティングにはとてもこだわっていて、僕は今日スクリーンで観て、みんな魅力的に映っていて、監督はいい仕事してるなと思いました。兄弟役ということもあって監督との距離がこの作品で縮まった気がします。仲間というか同志というか」
兄弟が通う居酒屋のマスターを演じた菊池豪は、なんと監督とはアルバイト先の映画館の同僚同士なのだとか。
「ある日、映画館のチケット売り場で“僕、映画を撮りたいんですけど出てもらえませんか”と直接オファーをいただきました(笑)。俳優と監督として仕事をするのは初めてで、いまここで話しているのも不思議な気がします」
マスターの臨月の妻を演じたふくだみゆきは、2016年に本映画祭アニメーション部門で最優秀作品賞を受賞した『こんぷれっくす×コンプレックス』の監督でもある。本作の中で特にコミカルな彼女の登場シーンを監督はこう振り返る。
「あのシーンは即興なんですが、これだけは言ってくださいというのはありました。ふくださんは役者ではないので、黒住さんと菊池さんのふたりにまかせて導いてもらおうと思ったら、ふくださんが一番すごかったという結果になりました(笑)」
全編を通して長回しのショットが印象的で、観客からはその意図についての質問も飛んだ。
「家の中以外はいろいろ制約があって角度が選べないこともありましたが、マスターショットを一度全部撮って、居酒屋のシーンなどは役者さんがとてもよかったので、そのまま使う判断をして、他のカットは撮らない形にしました。家の中については、意図はあるんですけど、作品を観た皆さんがそれぞれどう感じたかを大事にしたいと思うので、この場で言うのは避けたいです。どうしても聞きたい方は、あとで聞いていただければと思います」
『繕い合う・こと』の次回上映は、7月19日(水)11時から多目的ホールで行われ、ゲストによるQ&Aも予定されている。オンライン配信は7月22日(土)10時から7月26日(水)23時まで。