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【デイリーニュース】Vol.01 第21回SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2024開幕!

本映画祭出身の白石和彌監督が審査委員長に!

オープニング・セレモニーに登壇した国際コンペティション、国内コンペティション部門の監督と審査員、実行委員会委員のみなさん

 

今年21回目を迎えたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2024が、7月13日(土)よりスタートした。7月20日(土)から24日(水)の期間は、並行してオンライン配信でも作品を見ることができる。

 

若手映像クリエイターの登竜門としても知られる本映画祭。今年は、102の国と地域から合計1,201本の応募があり、その中から国際コンペティション10作品、国内コンペティション長編部門6作品、短編部門8作品の計24作品が上映される。

 

オープニング・セレモニーでは、映画祭実行委員の各氏が登壇し、映画祭で楽しんでもらいたいポイントなどを語った。

 

左から大野埼玉県知事、奥ノ木川口市長、細野会頭、八木総合プロデューサー

 

映画祭実行委員会会長を務める大野元裕・埼玉県知事のあいさつ。
「本映画祭は、若手クリエイターの才能の発掘を目的にスタートしました。現在では、国内外の映画祭での上映、また劇場公開を果たした作品を手掛ける監督を多数排出しております。映画を愛する多くの方々、開催地である川口市、そして審査員のみなさまのご協力 の賜物であると考えております。この場をお借りして、改めて感謝を申し上げます」

 

今年の国際コンペティション審査委員長は、『ロストパラダイス・イン・トーキョー』でSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2009のSKIPシティアワードを受賞した白石和彌監督。特集上映「商業映画監督への道」のなかで、国内コンペティション審査委員長の横浜聡子監督とともに、それぞれトークショーを行う予定だ。

 

「監督たちに、当時の気持ちや今日までの経験を語っていただくことにより、 映像制作に関わる若いクリエイターの方々に良い刺激を与えていただくことを期待をしております。また、誰もが知る名作やアニメーション作品の上映を行うことで、熱心な映画ファンからファミリーまで多くのみなさまに映画祭を楽しんでいただく用意をしております。13日、14日の2日間は、川口駅前キュポ・ラ広場において、川口商工会議所のご協力のもと映画祭のPRイベントも実施。映画祭のあとに、このイベントにお立ち寄りをいただき、おいしい一品を味わいながら、映画の話に花を咲かせていただきたいと思います」と大野会長。

 

副会長で開催市・川口市の奥ノ木信夫市長のあいさつ。
「鋳物だけでなく、多くの産業を擁する川口市。現在では、応援いただいているみなさまのおかげで、映像の町としても成果をあげています。映画祭期間中は川口駅西口より無料バスを運行。映画祭を応援する市民の会では副賞の提供も行っています。オープニング上映作品は、2020年に『写真の女』でSKIPシティアワードを受賞し、昨年は『マイマザーズアイズ』(23)が国際コンペションにノミネートされた串田壮史監督の『初級演技レッスン』。多くの場面の撮影が川口市で行われたこの作品を、みなさんと一緒に楽しみたいと思っております」。

 

大野会長のコメントにも登場した川口商工会議所の細野博隆会頭(映画祭実行委員会委員)は、学生時代、ヌーヴェルバーグの洗礼を受けたという。先日もBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下でクレーヌ・ドゥニ監督の『美しき仕事』を見たという細野会頭は、「本映画祭を登竜門として羽ばたいた若手クリエイターの方々に、さらにご活躍いただき、川口市にSKIPシティ国際Dシネマ映画祭があるのだと世界に広めていただけるよう、私たちもがんばっていきたいと思います」。

 

左から国内コンペティション部門の審査員、映画プロデューサーのメイスク・タウリシア、俳優の川瀬陽太、映画監督の横浜聡子(審査委員長)、国際コンペティション部門の審査員、映画監督の白石和彌(審査委員長)、映画プロデューサーの荒木美也子、配給会社ムヴィオラ代表の武井みゆき

 

続いて、土川勉映画祭ディレクターが各コンペティション部門のノミネート作品および、本日来場のクリエイター、審査員を紹介。全員が壇上に勢ぞろいして、映画祭がスタートした。

 

オープニングは2作品連続で国際コンペティション部門にノミネートされた串田壮史監督『初級演技レッスン』

オープニング作品『初級演技レッスン』左から毎熊克哉、大西礼芳、岩田奏、串田壮史監督

 

オープニング作品は、串田壮史監督の『初級演技レッスン』。映画祭の地元、川口市で多くのロケを行った同作は、廃工場で演技教室を開いたアクティングコーチの蝶野(毎熊克哉)が、即興演技を通じて父親を失った俳優・一晟(岩田奏)や辛い過去を抱える学校教師・千歌子(大西礼芳)の記憶に入り込み、自らの心の傷と向き合うことになる物語。

 

串田監督は長編デビュー作『写真の女』(20)で本映画祭SKIPシティアワードを受賞、続く『マイマザーズアイズ』(23)は昨年の国際コンペティションにノミネート、長編3作目の本作で堂々の映画祭オープニングを飾ることとなった。また、主演の毎熊克哉は2011年に本映画祭短編部門で奨励賞を受賞した『ケンとカズ』主演、大西礼芳も同じく2014年に短編部門にノミネートされた『時ノカケラ』主演と、いずれも本映画祭とは縁の深い顔ぶれがそろっている。

 

「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭(のコンペティション)は長編作品3本目までの監督が対象なので、 僕はこの3本目の『初級演技レッスン』で卒業ということなんですね。最高の花道を用意していただいたので、こちらも最高の作品で答えたいと思って制作しました」と串田監督。

 

毎熊は「『ケンとカズ』は僕にとって人生が変わった映画です。この作品のおかげでいろいろ続けることができて、今回また登壇させてもらって喋っているというのは感慨深いです」。

 

大西は「『時ノカケラ』は東京に出てきて初めて撮った短編主演映画で、これから役者としてやっていけるのか、当時すごく不安でした。今回10年ぶりにこの映画祭に帰ってこれて、まだ映画に参加させてもらえてますよ、と当時の自分に言ってやりたいです」と、こちらも感慨深げだった。

 

現在高校1年生だという岩田奏は、本映画祭初参加。「オープニング作品ということで本当に嬉しい気持ちでいっぱいです。素敵な役を貰って、演技しているときもずっと楽しかったですし、この作品をみなさんがどう受け取ってくださるのかすごく楽しみです」と話した。

 

本作は現実と記憶の間を行ったり来たりする物語だが、毎熊は最初に脚本を読んだときには「まったく意味がわからなかった」そう。「わからないと言いつつも、なんかとっても優しい作品だなと思いました。理屈じゃないものがいっぱい写っていて、心をあたたかくするというか。みなさんがこの作品から何を受け取るかをすごく楽しみです」

 

大西は「私は脚本を読んで絶対出演したいと強く思いました。セリフとか言葉より、場面の展開とか脚本のリズムが面白い。この映画の見どころはたぶん“反復”。でも同じところの反復ではなく、深層に入っていくのか、変化していくのかはわからない。そういう中でこの映画の面白さを感じ取ってもらえるといいなと思います」

岩田は「水面や風景の描写が多い映画なので、そういった空気感にも注目してご覧いただけたらなと思います」と見どころを語った。

 

串田監督は撮影中、3人に演技の指示はほとんどしなかったという。

 

「3人とも登場したときは謎の人物で、話が進むうちに徐々に過去が明らかになってくるストーリーなので、観客のみなさんに簡単に伝わらないように、謎めいた部分は謎めいたまま残しています。難しい映画が始まるんじゃないかと思う方もいらっしゃるかもしれないので(笑)、謎を解く手がかりをひとつだけ。毎熊さんの髪型を見てください」。観客のみなさんはどのように作品を受け取っただろうか。

 

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2024は、7月21日(日)までスクリーンで、7月20日(土)から24日(水)まではオンライン配信で開催され、各コンペティション部門の受賞結果はスクリーン上映最終日の21日に発表される。また、コンペティション以外にも審査委員長の白石和彌監督、横浜聡子監督の作品特集「商業映画監督への道」や、アンケートによる「みんなが観たい上映作品」、字幕翻訳者の戸田奈津子さんを招いた特別トークイベント、野外上映など様々な上映が行われる。

 

取材・構成:金田裕美子、関口裕子 撮影:河西隆之


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