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【デイリーニュース】Vol.11『ミシェル・ゴンドリーDO IT YOURSELF!』フランソワ・ネメタ監督 Q&A
ミッシェル・ゴンドリーは気前のいいマジシャン、マジックもトリックも見せてしまう
『ミシェル・ゴンドリーDO IT YOURSELF!』のフランソワ・ネメタ監督
国際コンペティション部門出品作『ミシェル・ゴンドリーDO IT YOURSELF!』は、映画『エターナル・サンシャイン』(04)などの長編映画や、ビョーク、ベック、ダフト・パンク、カイリー・ミノーグらのミュージックビデオ(MV)で世界に驚きを与えてきたミシェル・ゴンドリーの革新性に迫るドキュメンタリー。長年、助監督として彼を支えてきたフランソワ・ネメタ監督が、ゴンドリーの創造の源泉となるDIY精神の本質に迫る。
本編では、ゴンドリーが手掛けた作品をはじめ、彼の創造力が培われた生い立ちに踏み込む貴重なプライベート映像も紹介。さらに、彼の才能を紐解く一助となるカイリー・ミノーグ、ケミカル・ブラザーズらアーティストへのインタビューも実施したほか、映画の共同作業者でもあるスパイク・ジョーンズ、チャーリー・カウフマンとの関係にもカメラを向けた。
作中、ゴンドリーは、親しい仲だから気持ちを隠せないとネメタ監督の存在に困惑する。しかし、だからこそ本作は彼の信念に迫ることができたのではないだろうか。上映後のQ&Aでは、フランソワ・ネメタ監督が登壇し、その内情を明かした。
ネメタ監督はまず、本作製作の背景を説明。「30年前にミッシェルと出会い、それから一緒に仕事をしています。数年前に友人のプロデューサーから、彼についての映画を作るのはどうだろうかとの話を持ちかけられました。ミッシェルは愛されている映画監督ではありますが、ときに理解されていないところもあります。私たちはお互いによく理解しているので、本当のミッシェル・ゴンドリーを見せたいと思い、本作を作り始めました」
本作では、ゴンドリーが手掛けた作品のメイキングが多く引用されている。そのことを踏まえ、観客からはゴンドリーとドキュメンタリーとの親和性の高さについて指摘があった。
「ミッシェルは映画を見せることも好きですが、どうやってその映画を作ったのか、そのプロセスを見せることも好きなんです。ある種、マジシャンみたいなところがあるのですね。マジシャンが観客にマジックを見せて、さらにトリックも見せてしまう。そういう意味で、気前のいい映像作家だと思います」
ネメタ監督は、ドキュメンタリーにおいて関係性の深い人を対象にすることの難しさにも触れ、「自分に近しい人を撮ることはとても難しい。そういう意味で良い経験でした。ときには彼の良くない側面も見せたいと思うのですが、友情を失いたくないし、信頼関係も考えました。おそらく今回の映画で一番難しい点だったと思います」と心情を吐露した。
多くのファンを持つゴンドリーに焦点を当てたドキュメンタリーということで、観客からは、ネメタ監督がいかにして革新的な作品づくりを支えたのかについての質問も相次いだ。
「まず、私自身がミッシェルのアイデアを理解しなくてはいけません。なぜなら、彼のアイデアはクレイジーなことが多いからです。そして次に、クルーにそれを理解するきっかけを与えなければいけません。そのために絵を描いたり、フィルムテストや模型を作ったりすることが重要になります。クルーとミッシェルの関係は、ある意味、彼の作品と観客との関係に似ています。彼の作品はちょっと奇妙なので、最初は観客が努力して理解しなくてはいけません。でも、徐々にミッシェルと観客が歩み寄り、真ん中で出会う関係性があります。彼はそれを楽しんでいました。クルーとミッシェルとの関係も同様でした」
セッションの最後にはネメタ監督から嬉しいサプライズもあり、会場を沸かせた。
「実は本作と同時に2作目も作っていました。“In Bed With Michel”というタイトルもあります。というのもミッシェルは寝ないんです。彼は非常にクレイジーな人で、いつも頭を働かせており、夜になってもストップしないのでなかなか眠れません。次作は彼のクリエイティビティが真夜中にどのように展開されているかの話になります。本作はある意味、日中のAサイド、次作はダークサイドということでしょうか。来年お見せできればいいなと思っています」
『ミシェル・ゴンドリーDO IT YOURSELF!』の次回上映は、7月19日(金)11時から映像ホールで行われ、ゲストによるQ&Aも予定されている。オンライン配信は7月20日(土)10時から7月24日(水)23時まで。
取材・構成・撮影:河西隆之