亡き妻の墓参を日課とするハミット。
村に広がる不穏な空気が、彼の日常を一変させる。

©Hasan Demirtas

監督：ハサン・デミルタシュ
出演：メフメト・アリ・イゾル、ハリル・デミル、チチェク・テクデミル、サルベスト・カルカン

2023年 / トルコ / 90分

 

1990年、トルコ東部にあるクルドの村、マルディン。年老いたハミットは息子一家と暮らし、5年前に他界した妻の墓参りを日課としている。ある時不穏な出来事が村に起こり、平穏だった生活に変化が生じはじめる。ハミットは村を去るか残るか選択を迫られる。トルコでは、長く続く政治の混乱のなかで、多くの人々が国を追われた。本作では、プロの俳優と地元の住民による抑制された演技と、静謐なショットが、物語にリアリティを与えている。とりわけ、メフメト・アリ・イゾル演じるハミットの妻への深い愛情に溢れた表情は、観客に「別れ」の意味を深く考えさせることになるだろう。監督のハサン・デミルタシュは、前作の初長編ドキュメンタリーで高い評価を得たのち、初長編劇映画である本作ですでに独自の表現の世界を確立している。本作は、サレルノ国際映画祭で上映されたほか、複数の国際映画祭で上映が決まっている。