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【デイリーニュース】Vol.02『雨花蓮歌』朴正一監督 Q&A

自身のルーツと向き合い、作品に込めた監督の願い

朴正一監督『雨花蓮歌

 

国内コンペティション長編部門出品作『雨花蓮歌』は、在日コリアンの女子大学生を主人公に、家族の悲喜こもごもを描いている。2020年、在日ブラジル人社会の人々を描いた『ムイト・プラゼール』で本映画祭短編部門の観客賞を受賞した朴正一監督の初長編で、本映画祭での上映がワールド・プレミアとなる。上映後、朴監督がQ&Aを行った。

 

主人公は、母親に女手ひとつで育てられた在日コリアンの大学生、春美(山﨑悠稀)。日本名を名乗り、韓国語は話せず、コリアン社会とは距離を置いて生きてきた。そんなある日、姉の麗子が日本人男性と結婚をすることになり……。在日コリアンである監督自身の実体験なども下敷きになっている。

 

朴監督はカリフォルニア州De Anza大学中退後、独学で映像技術を習得。2007年制作の自主映画『男!ドあほう Rock’n Rollers』が第9回インディーズムービー・フェスティバルで準グランプリ、2018年制作の『Get On』がカリフォルニアの3-Minute Festivalに入選した実績もある。

 

朴監督は「一般の映画館では『マッドマックス:フュリオサ』が上映されていますけど、こっちに来ちゃって大丈夫ですかね?」と茶目っ気たっぷりに挨拶。2度目の映画祭参加については「本当にありがたいです。『ムイト・プラゼール』が入選するとか、その後に映画館で上映できるとは思っていなかった。そのときに高校生の一人を演じてくれたのが今回の主役、山﨑さんです。当時からアドリブをいっぱいやってくれて、次は彼女を主演にと決めていました。今回もたくさんアドリブを考えてくれ、脚本にクレジットしてもいいぐらい頑張ってくれました」と明かす。

 

前作のブラジル人社会に続き、在日コリアン家族を取り上げたことについてはこう語る。

 

「今度は自分のルーツのことを描かないといけないと思っていました。ただ、在日コリアンに向けて作ったわけではなく、何かを抱えている若い人に見てもらいたい、という思いがあったので、映画祭事務局の方には公式サイトのストーリーに在日コリアンのことは触れないでほしい、とお願いしました」

 

自身は国籍、アイデンティティーには複雑な思いを持っているが、国籍に限らず、何かに悩みを持っている人に映画を見て、幸せな気分になってほしいと願っている。

 

「誰もが国籍には関係なく、何かしらを背負って生きています。僕は国籍で抱えた悩み、苦しみは死ぬまで解決しないと思っています。その苦しみを解放に変えていくために、映画を撮ったんだと思います。私自身、映画の主人公と同様に、ずっと通名を名乗ってきました。思いが詰まった作品を作ったときに本名で発表したいと思い、以来、『朴』を名乗っています。ただ、吹っ切れたわけではなく、いまだに抱えている。だからこそ、作品の原動力になるのかなという気がしています」と明るく言い切った。

 

雨花蓮歌』の次回上映は7月17日(水)14時30分から映像ホールで行われ、ゲストによるQ&Aも予定されている。オンライン配信は7月20日(土)10時から7月24日(水)23時まで。


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