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【デイリーニュース】Vol.06『日曜日』ショキール・コリコヴ監督 Q&A
始まりも終わりも日曜日 『東京物語』を思わせるウズベキスタンの新鋭監督初長編
ショキール・コリコヴ監督『日曜日』
国際コンペティション部門出品作『日曜日』は、ウズベキスタンの田舎の村に暮らす老夫婦の日常と、二人に徐々に訪れる変化を淡々と追ったショキール・コリコヴ監督作品。これまでに上海国際映画祭でアジア・ニュー・タレント賞最優秀作品賞を受賞するなど、各国の映画祭で高い評価を受けている。
牛の乳を搾り、パンを焼き、刈った羊の毛から糸を紡ぎ、絨毯を織り、夜は外でテレビを見る。長年変わらない生活を送ってきた老夫婦に、町に住む息子は次々と便利な生活用品を贈るようになる。マッチ不要のガス台、リモコンで操作できるテレビ、音の静かな冷蔵庫、ビデオで話せるスマートフォン。しかしこれらは二人には操作すらもおぼつかず、困惑、イライラするばかりだった……。
映画祭2日目の14日(日曜日!)、『日曜日』は多目的ホールで上映され、上映後にはコリコヴ監督を招いてQ&Aも行われた。コリコヴ監督の長編第1作である本作は、どのような経緯で作られたのだろうか。
「私の短編映画がフランスの映画祭で賞を獲った後、国から10万ドルの予算をもらうことができました。しかし長編映画を製作するにはかなり少ない予算です。それで同じ家の中で最初から最後まで撮影できる脚本を書きました。老夫婦のモデルは私の祖父母ですが、生活ではなく二人の性格をモデルにしています。脚本には2年かけていて、ここで起こる出来事や暮らしは様々な場所で私が見たり聞いたりしてきたことです。私自身も息子のキャラクターのモデルになっています。年老いた両親にはできるだけ便利なものを買ってあげたいと思いますし、実際に両親が賛成してくれるのであれば贈るようにしています」
物語はほぼ家の敷地の中だけで進むが、時折門の外にウズベキスタンの雄大な風景が広がっているのが見える。
「自分が思っていたような風景が撮影できるロケ地を探すのに8、9カ月かかりました。老夫婦は山のふもとに暮らしていて、ドアの外に出ると美しい自然が見えるようにしたかったのです」
映画は「火曜日」「木曜日」など、曜日名で各シーンが区切られている。『日曜日』という映画のタイトルについて、監督はこう話す。
「ウズベキスタンでは、一週間は日曜日に始まり日曜日に終わると考えられています。人生の始まりも終わりも日曜日、8の字のように永遠を表すマークをイメージしました。人生を歩むということは曜日の積み重ね、一週間の積み重ねであるという哲学的な意味も含まれています」
老夫婦と子どもたち世代の価値観の違いやずれを描いた作品というと、どうしても小津安二郎監督の『東京物語』が思い浮かぶが、客席からも同様の意見が出た。それについては、「『東京物語』とストーリー的に似ているということは、これまでにも何度か言われたことがあります」とのこと。
映画のラスト、カメラは老人の歩く姿を淡々と追っていく。この長回しが意味するものを問われた監督は、「その質問には私は答えません。それは見る側、お客さんが決めること。ひとつ言えるのは、私はカメラを持って一度だけこの家に入り、彼らの人生、生活に入り込み、そしてまたカメラを持って出てきた、ということです」と話した。
『日曜日』の次回上映は7月17日(水)11時から映像ホールで行われ、ゲストによるQ&Aも予定されている。オンライン配信は7月20日(土)10時から7月24日(水)23時まで。
取材・構成:金田裕美子 撮影:松村薫