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【デイリーニュース】Vol.14『明日を夜に捨てて』張蘇銘監督、木越明、松原怜香、夏井紀章 Q&A
森田芳光監督が描く人間味に影響を受け、映画監督を志した
『明日を夜に捨てて』左から松原怜香、脚本の夏井紀章、木越明、張蘇銘監督
国内コンペティション長編部門の『明日を夜に捨てて』は、送迎車の故障により深夜の東京に放り出された風俗嬢の2人が、他愛のない会話の中から真実をすくい取り、ささやかな希望を見いだしていく物語。16日にジャパンプレミアとして多目的ホールで上映され、張蘇銘監督、出演の木越明、松原怜香、脚本の夏井紀章がQ&Aを行った。
張監督は森田芳光監督に影響を受け、映画監督を志したという。最初の出合いは1981年の『の・ようなもの』。「これといったストーリーはないけれど、日常に特化して人間味を映し出しているところに魅かれ、こういう人間を描けるようになりたいと思った。『(ハル)』(96)などもそうですが、女性をきれいに撮れるところも素晴らしい」と明かした。
実際に、深夜に女性2人が警官に追いかけられて走っている場面を目撃したことがあり「その姿が美しく、外国人から見て魅力的」と思ったのが発想の起点。その思いを本作の主人公のアスカとアヤにも投影した。北海道での舞台公演中のため欠席したアスカ役の小日向雪とは旧知の中で、その小日向の紹介で木越をアヤ役に抜擢。「インスタグラムのストーリーで2人がいちゃいちゃしている動画を見て、この2人が出てくれたらおいしく撮れるかなと思った」と振り返った。
木越と松原は、「台詞がめっちゃ難しかった」と声をそろえる。木越は聖書の一節を唱えるシーンもあったが、「アスカの方が役回り的には難しかったはず。私は浮ついたことを言ってもちょっと浮ついたキャラクターでもあったので、何となくニュアンスも合って成立していたかな」と手応えありの様子。ただ、「監督は台詞一言一言に対するイメージが強くてこだわりがあった。リハーサルも多く、観念的な台詞は体感でつかむ機会が多かった。だから台詞の難しさよりも、テイクの多さが……」と恨み節交じりに語り、張監督を苦笑させた。
高山暖との共同執筆だった夏井は、「脚本は初挑戦で、フォーマットで文章を書くことに慣れるまでが大変だった。基本的には高山さんとシーンを振り分けて執筆したが、高山さんより面白いものを書こうと思って胃が痛くなることもあった」と述懐。客席にいた高山も、「僕にグサグサ刺されているようだと言っていた。でも、共に自分が面白いものを書こうとしたことが結果うまくいったよね」と暴露。張監督は、「脚本は1年くらいかけたけれど、2人の闘いを見ていてうれしくなった。毎週一回は会っていたので、どんなシーンや台詞が加わってくるか楽しみだった」と話した。
『明日を夜に捨てて』の次回上映は7月20日(土)16時30分から映像ホールで行われ、ゲストによるQ&Aも予定されている。オンライン配信は7月20日(土)10時から7月24日(水)23時まで。
取材・構成・撮影:鈴木元