デイリーニュース
関連企画「メイド・インSKIPシティ」
〈D-MAP2011〉藤村享平監督『バルーンリレー(仮)』製作発表&
「GO-allプロジェクト」作品上映
藤村享平監督
若手映像クリエイターの育成・支援を目指す彩の国ビジュアルプラザが実施するデジタルシネマ製作支援プログラム〈D-MAP〉。ユナイテッド・シネマ他、協力会社との協業により、映画の企画開発、製作、一般劇場公開までを一貫して支援し、商業映画監督デビューを促す同プログラムからは、これまでに『ソロコンテスト』(D-MAP2008)と『ネムリバ』(D-MAP2009)の2作品が誕生しているが、今回第3弾〈D-MAP2011〉の製作が決定した。
採択された企画は、ユナイッテッド・シネマが主催する「シネマプロットコンペティション」でテーマ部門を受賞した『バルーンリレー(仮)』(原案・馬場大介)。監督には、08年、09年と2年連続で当映画祭短編コンペティション部門にノミネートされた藤村享平さんが選ばれた。
製作発表会で藤村監督は、「20代のうちに長編を撮ることを目標としてきたので本当に嬉しい。初めての長編で不安もありますが、楽しみの方が大きいです。28歳の今の自分にしか作れない映画を作りたい」と抱負を語った。
同作は12月上旬撮影、2012年2月上旬完成、3月ユナイテッド・シネマにて劇場公開予定。
(左から)富永勲(デジタルSKIPステーション)、岸建太朗、大森研一、高嶋義明、完山京洪
「GO-allプロジェクト」は、彩の国ビジュアルプラザを中心に活動する映像クリエイターをプロデュースするプログラム。今回はここで制作された短編映画『救命士』(完山京洪監督)、『あいまいな夢の国』(高嶋義明監督)、『げんこつ母さん』(大森研一監督)、『夢の力』(岸建太朗監督)の4作品が上映され、4監督によるトークセッションが行われた。
映画祭の意義や同プロジェクトについて、「自主映画はホールで自主上映するか映画祭に出品するしかない。映画祭は生の批評が聞けて、その後に生かせる機会」(高嶋監督)、「映画監督になる方法は、助監督から始めるか自主映画で認められるかの2つ。映画祭に求めるものはその後の製作支援」(大森監督)、「製作した先のことを明確にして、配給、上映まで支援してもらえることに感謝している」(岸監督)、「映画は世界とつながることができるもの。 埼玉から世界に出ていく監督になりたい」(完山監督)など、さまざまな意見が出された。
『ある母の復讐』ギャビン・リン監督、エルメス・リュ(脚本)Q&A
「両親の世代の人たちに見てもらいたい復讐と許しの物語」
ギャビン・リン監督(左)、脚本のエルメス・リュ(右)
工場で働くユイホアと工場長の娘シュンファンは子供の頃からの親友同士。ユイホアは同じ職場のグォウェイと結婚しやがて子供を身籠るが、グォウェイはシュンファンとも工場で密会を重ねており、シュンファンも妊娠してしまう。2人の関係を知ったユイホアは、離婚の条件として思いもよらぬ要求を突き付ける。
『ある母の復讐』は、3人の愛憎関係だけでなく、親子の絆や家族愛をも描いたドラマ。ギャビン・リン監督と脚本のエルメス・リュは、この衝撃的なストーリーをどのように組み立てていったのだろう。
「最初は、2人の娘にスポットを当てる構成でした。しかし自分の両親の世代に親しみを持ってもらえる映画にしたいと思い、母親たちの衝突と再会を中心にすえるよう脚本を書き直しました。70年代に設定したのは、当時の人の方が感情を表に出す傾向があり、ドラマチックな展開にできるからです」とリン監督。
リュ氏は、「許しがテーマになっているので、そこを際立たせるためにインパクトの強い要素を入れました」と話す。
インパクトの強い要素とは、ユイホアのある要求に他ならない。この場面についてリン監督は、
「これは台湾人が見ても現実的ではないかもしれません。極限状態の母親しかやらないでしょう。ここはお互いの子供を育てるという設定に持っていくために、あとから物語に加えた部分です」。
「この作品を母に捧げたい」と何度も強調したリン監督。
「私は半年間入院したことがあるんですが、その間に世話をしてくれた母と新たな交流が生まれ、互いを見つめ合うようになりました。 それまで厳しい映画界で仕事をすることに反対だった母が、今では応援してくれ、本作でも70年代の衣裳や資料も提供してくれているんですよ」。
『ある母の復讐』は、15日(土)17:30から映像ホールでも上映される。
『短編(4)』Q&A
『リスト』田中智章監督、『ケンとカズ』小路紘史監督、『forgive』川村清人監督
(左から)川村清人監督、小路紘史監督、田中祐希、山田キヌヲ、田中智章監督
『短編(4)』では、『リスト』、『ケンとカズ』、『forgive』の3作品が上映され、Q&Aにそれぞれの作品の監督と出演者が登壇した。
1本目の作品は、インドで行方不明になっている姉が自分宛てに送っていた「帰国したらやることリスト」を発見した妹が、姉の代わりにリストの項目を実行しようとする『リスト』。田中智章監督は、企画の始まりをこう語る。
「映画を見ていて一番好きなのは、主人公が不合理なことや無謀なことをコツコツやっていて、最後に報われる瞬間のカタルシスなんです。そういう物語を作りたいと思いました。そして死や、どうしようもないものを乗り越えるという、映画にしかできない奇跡、寓話を描きたかった」。
一緒に挨拶に立った主演の田中祐希さん(現在は木乃江祐希に改名)は劇団ナイロン100 ℃の舞台や映像、山田キヌヲさんは『悪人』などの映画やCM、舞台で活躍しているこれからが楽しみな女優さんたちだ。
2本目の『ケンとカズ』は、ドラッグの売人と足を洗おうとしているその相棒のドラマ。車の中という狭い空間の中でとらえたクローズアップを多用し、緊迫感を盛り上げている。小路紘史監督は、
「2人の男のカットを描きたいと思ってこのストーリーを考えました。友情や決裂、再生を描きたかったんですが、それ以前に韓国映画『息もできない』を見て凄く感動して、こういう映画を撮ってみたいと思ったのが始まりです。存在感のある俳優さんがまず決まっていて、そこからあて書きで2人の男の人間ドラマを書いていきました」。
3本目の『forgive』は、同級生を執拗にいじめる少女、いじめに遭いながらただ耐える少女、そんな彼女の力になろうとする友人という3人の中学生の関係を丁寧に描く。この題材を取り上げたきっかけを、川村清人監督はこう説明した。
「ある日電車の中で女の子2人が、この映画の屋上のシーンのような会話をしていたんです。『私は修学旅行なんて行かなくていいし』とか。この子は学校で辛い思いをしているんだろうなと思ったのが映画を作ろうと思ったきっかけです。いじめを題材にしたというより、生きていく中で辛いことはあるけれど、それを乗り越えて希望にたどり着く姿を30分の中で描きたかったんです」。
『短編(4)』は、15日(土)10:30から多目的ホールでも上映される。