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【デイリーニュース】 vol.03 『短編 ①』 Q&A 『夏の巫女』『ラストラブレター』『After Hours』『born、bone、墓音。』
短い上映時間にそれぞれの監督のこだわりを詰めて
左から『夏の巫女』小向英孝監督、吉田知央(出演)、白磯大知(出演)、『ラストラブレター』森田博之監督、ミネオショウ(出演)、影山祐子(出演)、『After Hours』小林達夫監督、川瀬陽太(出演)
短編コンペティション部門12作品を4本ずつに分けた最初のグループ『短編①』の上映が、多目的ホールで行われた。
上映作品は、夏休みに受験勉強のため山奥の宿坊にやってきた男子高校生2人がそこで働く巫女と出会う『夏の巫女』、近未来を舞台に夫を亡くした女性とヒューマノイドとして蘇った夫との最後の生活を描く『ラストラブレター』、中年DJと初めてクラブにやってきた少女の一夜の交流を描く『After Hours』、沖縄・粟国島の風習「洗骨」をめぐる新婚夫婦と家族のドタバタを描いた『born、bone、墓音。』の4本。
上映終了後には満席の観客に拍手で迎えられ、『夏の巫女』の小向英孝監督、主演の吉田知央さんと白磯大知さん、『ラストラブレター』の森田博之監督、主演のミネオショウさんと影山祐子さん、『After Hours』の小林達夫監督と主演の川瀬陽太さんがQ&Aに登壇した。
『夏の巫女』は栃木県鹿沼市から助成を受け、同市の魅力を伝えるというコンセプトのもと撮られた作品。ストーリーの着想をたずねられた小向監督は、「鹿沼市の魅力をどうしたら伝えられるのかを考え、登場人物たちがその場にいたという“残り香”みたいなものを残して終わったほうが心に残るんじゃないかなと、そこから逆算してストーリーを考えました」と振り返った。
主演の2人は、いずれもスクリーン向けのお芝居をするのは本作が初めて。「最初はガチガチでしたが、共演した2人が同じ事務所の先輩だったことと、小向監督がやさしい方だったので、すぐ緊張も解けました。今できる精一杯の演技ができたかなと思います」(吉田さん)、「撮り終えたばかりの映像を見せていただいたりして、どんな表現ができるのか試行錯誤しながら演じられたことは、役者として楽しかったです」(白磯さん)と撮影時の心境を振り返った。
『ラストラブレター』の森田監督には、脚本執筆のきっかけは何かとの質問があがった。「父親が10年ほど前に他界したのですが、亡くなった時、母親に何も言えなかったんです。死ぬときには『さよなら』って言えないものなんだ……と思って、そんな思いを大好きなSFの設定を借りて撮りました」と森田監督。そして、ヒューマノイドという難役を任せたミネオさんを「難しかったのでは」とおもんばかったが、意外にもミネオさんは「苦労した点はそんなにない」と涼しい顔。「スタッフ・キャストがほとんど同い年でやりやすく、現場はみんな息が合っていた」といい雰囲気で撮影が進んだことをうかがわせた。影山さんは、最後の海辺のシーンが印象に残っていると述懐。「陽が落ちる前に撮ったのですが、監督はロマンチックになりすぎるのは嫌だと、陽の光が当たらないように遮蔽したり、調整していたのが面白かったです」。
渋谷の一夜を切り取ったストーリー同様、一晩で撮り上げたという『After Hours』の小林監督には、撮影にあたり意識した点は何かとの質問があがった。小林監督は、ラストに出てくる渋谷の朝の風景の“色”について言及。「ほんとに一瞬青くなるんですよね。冬の朝6時前から6時20分ぐらいの間の撮影だったと思うんですけど、その間に結構長いワンカットを成立させられるよう、逆算して全体を撮りきりました。90年代の様子も劇中で描かれるので、90年代に普及していたカメラを中心に使って撮り、あとで35ミリのフィルムに焼いて、またデジタルに戻すという作業を行いました。あの青は後で処理した色ではなく、実際に撮れたもの。撮影の中で一番意識した部分です」と裏話を披露した。そんな時間的制約がある中でのお芝居に臨んだ川瀬さんは、「スリリングで緊張感を持ってやれたので面白かった」と振り返った。
短い上映時間の中にも、それぞれの監督のこだわりが詰まっていることが伝わるQ&Aでのやり取りだった。
『短編①』は、7月18日(火)14時より映像ホールで上映が行われ、ゲストによるQ&Aも予定されている。また、7月17日(月・祝)には11時よりこうのすシネマで、同日13時30分からは彩の国さいたま芸術劇場 でサテライト上映も行われる。