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【デイリーニュース】vol.19 クロージング・セレモニー(表彰式)開催!
フィジカルでの開催を成立させた映画祭関係者への感謝続々!
前列は第19回の受賞者。後列は審査員、実行委員、主催者
7月16日(金)から9日間にわたって開催されたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022。19回目の今年、新型コロナウイルスのパンデミックから完全に抜け出せてはいないものの、オンライン配信に加え、3年ぶりにフィジカルでも開催されることとなった。
応募数は世界99の国と地域から計935作品。映画祭では、厳選した国際コンペティション部門10作品、国内コンペティション長編部門6本、同短編部門8作品を一部ゲストのQ&Aとともに上映し、最終日の24日(日)は、受賞作品の上映に先駆けてクロージング・セレモニーと表彰式を行った。
まずは主催者を代表して、SKIPシティ国際映画祭実行委員会会長の大野元裕埼玉県知事、八木信忠総合プロデューサー、武内政文 埼玉県議会副議長、杉本佳代 川口市議会議長の挨拶。続き、各賞の受賞作・受賞者が発表された。
国内コンペティション部門の芦澤明子審査委員長、国際コンペティション部門の寺島しのぶ審査委員長の総評に続き、土川勉映画祭ディレクター、SKIPシティ国際映画祭実行委員会副会長の奥ノ木信夫川口市長の「来年もまたこの場所で会いましょう」の言葉で、映画祭セレモニーをクローズした。
受賞コメント、および審査委員長の総評は以下の通り。(*受賞一覧はこちら)
【国際コンペティション部門】
最優秀作品賞
『揺れるとき』 サミュエル・セイス監督
『揺れるとき』サミュエル・セイス監督、キャロリーヌ・ボンマルシャン プロデューサー
サミュエル・セイス監督
「この映画祭にご招待いただき、改めて感謝致します。この映画はスタートから面白い旅路となりました。そんな中、プロデューサーのキャロリーヌさんと一緒に仕事できたことはラッキーだったと思っています。ある少年の幼少期を描いたわけですが、10歳は映画的に非常に美しい年齢。それを捉えるチャンスだと思いました。我々はコロナ禍という苦難の時代にいます。観客はなかなか映画館に足を運びづらいわけですが、皮肉なことに映画を作る側には再び活力が漲ってきている気がします。さまざまな物語が語られはじめ、技術革新によって新たな領域への挑戦が始まっているといいますか。僕は、映画とは人と一緒の空間で体験するものだと思っています。ですので、再び観客の皆さんが劇場に足を運んでくださることを願っています。最後に審査員、映画祭関係者の皆さんに改めてお礼申し上げます」。
キャロリーヌ・ボンマルシャン プロデューサー
「今回、言語の違いからコミュニケーションがうまく取れないジレンマを体験することがありました。同時に、映画とは重要なコミュニケーションツールであることを知りました。フランスの小さな町の物語が日本の観客や審査員の皆さんに伝わったことがその証拠です」。
【講評】寺島しのぶ
「審査員一同、心を揺さぶられました。特に主人公のジョニーを演じたアリオシャ・ライナート少年。彼から目が離すことができず、監督は彼をどのように導かれたのか気になります。とても素敵な映画でした。ラストに、ちゃんと希望が残されているところにも映画としての完成度と、未来を感じました。この作品がぜひ日本でも一般公開されることを望みます。(審査中は個人的に話すことができないため)監督とぜひお話したかったです」
監督賞
『マグネティック・ビート』 ヴァンサン・マエル・カルドナ監督(来日叶わず)
【講評】松永大司
「このような状況下にも関わらず、お客さんと一緒に映画を観られたのは素晴らしい体験でした。コロナ禍で映画を作り上げた監督の皆さんにとっても一生忘れないことなのではないかと思います。私事ですが、僕のデビューは、東日本大震災直後の2011年3月26日で、映画館にはお客さんがいませんでした。この一生忘れられない体験によって、僕はお客さんに映画を観てもらうことの大切さを学びました。これはいまでも僕の映画作りの原動力となっています。
久しぶりに劇場で、多くのお客様とともに観た『マグネティック・ビート』は、僕に“映画が好きだ”ということを思い出させてくれました。とにかく音の使い方がうまく、家では感じることのできない音の設計を堪能できました。そうやって一観客としてワクワクできたのは、とにかく監督の力。そういう意味での監督賞となります。まだ1作目という驚くべき実力にも、大きな刺激を受けました」。
審査員特別賞
『UTAMA~私たちの家~』 アレハンドロ・ロアイサ・グリシ監督
『UTAMA~私たちの家~』のアレハンドロ・ロアイサ・グリシ監督
「このような賞をいただけたことを大変光栄に思います。映画祭関係者の皆さん、ありがとうございます。皆さんのおかげで、日本という文化を堪能することもできました」。
【講評】ナム・ドンチュル
「どの作品も素晴らしく、一審査員、観客として堪能し、思い出深い体験を得ることができました。『UTAMA~私たちの家~』は魔法の力で観客を別世界へと誘うような作品。これを観ていると、さまざまなことに対する偏見が取り除かれていくような気がします。例えば、文明のほうが未開であることより素晴らしいのか? 若さのほうが老いより望ましいのか? そういった疑問が頭をもたげるわけですが、この作品はそれらを正否で捉えるのではなく、ありのままに受け止めることが必要なのだと感じさせます。何よりも老夫婦に敬意を表したいと思いました。ありがとうございました」。
【国際コンペティション部門総評】寺島しのぶ審査委員長(ビデオコメント)
「審査委員長として参加させていただきましたが、クロージングに参加できず、大変残念に思っています。コロナ禍にあるためなのか、拝見した10作品には死生観が語られるものが多かったように思いました。
コンペティション作品10本の内、5本にフランスが出資していることに、芸術に対する理解の差を見せつけられた気もしましたが、どんな状況でも、果敢に映画を作り続ける皆様に敬意を表します」。
観客賞
『彼女の生きる道』 セシル・デュクロック監督
(観客賞はギリギリまで集計するため、海外在住の受賞者には連絡まで)
【国内コンペティション部門】
SKIPシティアワード
『Journey』 霧生笙吾監督『Journey』の霧生笙吾監督
「上映に来てくださった担当ゼミの教授に怒られたりと、いろいろ足りないことだらけで、正直、賞をもらえるとは思っていませんでした。映画祭を通して、いろいろ意見をいただき、自分の課題に気づけました。でも映画を作る楽しさを知ったので、めちゃくちゃSKIPシティの機材を使って、またSF映画を作りたいと思います。ありがとうございました」。
【講評】芦澤明子
「インディペンデント映画にも関わらず、SFのジャンルに果敢に挑戦されたことへの期待を込めて、この賞を贈ります。この賞の強みは、SKIPシティにある機材が使い放題なこと。とことん使って、どうか良い作品を作ってください」。
優秀作品賞 長編
『ダブル・ライフ』 余園園監督
『ダブル・ライフ』の余園園監督
「この映画祭に参加できてとてもうれしく思っています。これからもさらに頑張ります。映画祭関係者、審査員、観客、そしてスタッフ、キャストの皆様、本当にありがとうございました」。
【講評】月永理絵
「いくつもの日本映画を参照しながらも、そこからどうやったらオリジナルを作り出せるか真摯に向き合われた作品だと思います。なにより映画的というしかない素晴らしい瞬間に溢れていた。人と手が触れ合う瞬間の喜び、眼差しが交差するまでの緊張感、動作や自然によって映画を立ち上げていこうとする強い力を感じました」。
優秀作品賞 短編
『サカナ島胃袋三腸目』 若林萌監督
『サカナ島胃袋三腸目』の若林萌監督
「素晴らしい賞をいただき、キャストの3人、音楽担当のみんな、音響、仕上げを手伝ってくださった方、映画祭関係者の皆様にお礼申し上げます」。
【講評】鶴田法男
「発想が豊かで、いろいろ詰め込まれたものが、きれいにまとめているところが評価の対象となりました。若林監督だけでなく、この作品に関わられた音楽やキャストの皆さんも素晴らしい才能でした。
個人的には、他にも山口あいり監督の『こねこ』も素晴らしかったし、Jホラーの父と呼ばれた私としては、中西舞監督の『喰之女』も評価したかったことを付け加えさせていただきます」。
【国内コンペティション部門総評】芦澤明子審査委員長
「コロナ禍を経て3年ぶりとなる映画祭の開催、関係者の皆様の努力の結果、映画祭を無事に終えることができ、本当にうれしく思います。レベルの高さと撮影の多くがコロナ禍で行われたことに驚きました。そして、それぞれ作品にまだ見ぬコロナ禍以降の未来が表現されていたことも、これまでの作品と大きく違うところだと思います。『ダブル・ライフ』『サカナ島胃袋三腸目』、本当に受賞おめでとうございました。
個人的に“伸びしろ賞”を贈るとしたら堀内友貴監督の『明ける夜に』、吹田祐一監督の『しかし、それは起きた。』に、また『こねこ』も繊細な素晴らしい作品だったと思います。印象的だったのは、『しかし、それは起きた。』『こねこ』のお弁当のシーン。そこに登場するお弁当は愛情に満ち、作品の内容を物語る大きな役目を担っていたと思います。
映画はやはり大きなスクリーンで観るものだと思います。今回、賞に漏れた皆さんもこの大きなスクリーンで上映されたことに誇りと自信を持って、新作に臨んでください。ボランティア、映画祭関係者の皆様に感謝いたします」。
観客賞 長編
『ヴァタ ~箱あるいは体~』 亀井岳監督
『ヴァタ ~箱あるいは体~』の亀井岳監督
「マダガスカルの人々、応援してくれた人々、映画祭関係者、観客の皆さんに感謝いたします。映画とは共有すること。今回、海外の映画監督や、観客の皆さんと、死生観、生命の連鎖について共有させていただいた。これからも共有することの大切さを映画で描いていきたいと思います」。
観客賞 短編
『ストレージマン』 萬野達郎監督
『ストレージマン』の萬野達郎監督
「キャスト、スタッフ、応援してくださった皆様、映画祭関係者にお礼申し上げます。この映画は、コロナ禍だけれど、みんなで頑張っていこうという気持ちを込めて撮った作品なので、それが観客の皆さんに刺さって、こういう賞をいただけたのはとてもうれしいです」。