【デイリーニュース】 7月13日(土)
vol.05 『震動』平野朝美監督&出演陣Q&A
「密に音楽と関わった映画になりました」
左から平野朝美監督、川籠石駿平さん、北香那さん、松永拓野さん、九太朗さん
長編コンペティション部門上映、2本目は日本映画『震動』。児童養護施設に暮らす少年と少女の心の揺れ、家族、友情、将来への希望と不安、そして音楽という夢に打ち込む姿を、細やかに、そして鮮やかに描いた青春映画だ。
養護施設の中でもリーダー的存在である高校生・春樹は、同じ施設の耳の不自由な少女・直を妹のように思っている。卒業後に独立しようとバイトに励んでいた春樹だったが、クラスメイトに誘われてバンドに加わるようになり、次第に音楽にのめり込んでいく。自分には聞こえない音楽に夢中になる春樹との間に、直は初めて距離を感じ始める……。
「2、3年前から構想を練っていた」という平野朝美監督は、本作の脚本で伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞を受賞。自ら編集も手がけて映画を完成させた。「自分自身も音楽をちょっとやっていたので、音楽に力をもらった映画にしたいと。音楽は鍵となる部分なので、好きなバンドの方をナンパして(笑)、ラストの曲も書き下ろしていただいて、密に音楽と関わった映画になりました」。
春樹役の川籠石駿平さんは、映画と同じくギター経験は全くなかったという。「ギターも手話も初めてだったんですが、撮影の半年前から練習する機会があったので、それは感謝しています。春樹の直を思う気持ちや夢を追う気持ちは、自分にも通じるものがあります。監督は優しくて、芝居のことも真正面から言わないんですが、言葉がなくても伝わる人ですね」。
耳が不自由な直役の北香那さんの台詞は、全て手話で語られる。「手話は、練習するうちに理解できるようになって、結果的にはきちんと覚えられて良かったです。直は感情的でわがままで、気が強いのにすぐ泣くところが自分に似ています。脚本を読んで絶対にやりたいと思いましたし、私の中で一番の思い出になっている作品です」。
クラスメイトでバンド仲間の町田役、松永拓野さんも音楽経験はなかった。「ドラムが一番難しいと言われて。実際なかなかできませんでした。この映画のオーディションでは、自分はこういうふうに見られているんだという新しい発見もしました」。
施設の先生役の九太朗さんは、「リハーサル期間が6カ月間あって、本を読んだりドキュメンタリーを見たり、役の準備ができたのは非常に助かりました。平野監督はあまりダメを出さないんですが、こちらが提案すると“いえ、元の通りにやって下さい”と言う。芯がぶれない、脚本に込めた思いの強さを感じましたね」。
『震動』は、次回18日(木)17:00から映像ホールで上映される。