【デイリーニュース】 7月14日(日)
vol.14 『狼が羊に恋をするとき』 ホウ・チーラン監督Q&A
「あるコミュニティ(学生)だけに通用する話にはしたくなかった」
ホウ・チーラン(侯季然)監督
「予備校に行くね」のメモを残し、消えてしまったガールフレンドを追って予備校が集まる南陽街に辿り着いたタン。彼は、変わり者の経営者にヘッドハント(?)され、コピー店で働き始める。毎日、予備校で使う試験用紙を印刷するうちに、ある日、一枚の試験用紙の裏に描かれた羊のイラストを見つける。イラストレーターを目指して予備校で働く女の子、小羊(シャオヤン)の描いたものだった……。
長編コンペティション部門に出品された『狼が羊に恋をするとき』の舞台は、予備校が密集する台北・南陽街。自分の手で、恋と未来を見つけようとする、南陽街に流れ着いた男女の成長を、ストップモーション・アニメやVFXを駆使したキッチュな映像で描く。
大学受験の際、この街に通ったホウ・チーラン(侯季然)監督は、多くの学生が勉強し、合格し、この街を通過していく中で、ここに留まっている人に興味を持ったという。
「南陽街に限らず、台北にはいろいろな事情を持つ人々が集まります。ビジネスの種類も様々。夢を持つ人、破れた人、夢を見つけたいけど見つからない人……、そこで生きる人々は、それぞれとても面白いストーリーを持っているはずだと想像しました。そして、いつか映画監督になったら、この街を舞台にした映画を作りたいと思っており、本作でそれが実現したわけです」
台湾では昨年冬に公開され、大ヒットとなった。ギデンズ(九把刀)監督やニウ・チェンザー(鈕承澤)監督ら実力派ヒットメイカーも絶賛する本作。
「僕を含め、4人でディスカッションしながら、脚本を書きました」とホウ監督。主演の男女の物語はともかく、世代、職業の異なる人の人生が交錯するので、脚本を様々な視点で確認する必要があったのだろう。予備校街で働くタンやシャオヤンら主人公を始め、コピー店の経営者、牧師など若者を見守る人々、炒飯屋台のイケメン調理師など、それぞれの存在が物語の重要なエッセンスとなっている。
「学生の話にするつもりはありませんでした。僕も子どもの頃、実家のかばん屋の店番をしていましたが、あるコミュニティだけに通用する話にはしたくなかったのです」
本作のピッチ(出資をあおぐプレゼンテーション)を様々な国のプロデューサーの前で行った際、アメリカのプロデューサーには「なぜそんなに受験が重要なのか、わからない」と理解されなかったという。逆に日本、韓国などアジアのプロデューサーからは、すぐに共感を得られたそう。受験戦争がアジアの共有事項であることの良し悪しはともかく、それに抑圧された若者たちがアジア全域におり、そのほとんどがこの映画のラストシーンに解放感を覚えるのではないかと思われる。
『狼が羊に恋をするとき』は次回、17日(水)11:00から多目的ホールで上映される。