【デイリーニュース】 7月15日(月・祝)
vol.18 「短編(4)」Q&A
『三歩、さがって』『不肖の娘』『カタラズのまちで』
左から『カタラズのまちで』の木川剛志プロデューサー、『不肖の娘』の有馬達之介監督、『三歩、さがって』に出演した真奈美役の田中結花さんと高橋雅紀監督
短編コンペティションの最終グループとなる「短編(4)」で上映されたのは、『三歩、さがって』『不肖の娘』『カタラズのまちで』。社会通念にとらわれて身動きができなくなくなるものの、そのカラを突き破り自分を再構築していく、前向きな作品が集まった。
男女の役割に対する同調圧力に悩む若い夫婦を描いたのは高橋雅紀監督の『三歩、さがって』だ。仕事にやりがいを感じている正社員の妻と、愚痴ばかりをこぼす派遣社員の夫。妊娠した妻は夫に主夫になってほしいと頼むが、夫は世間の体裁や自身のプライドが邪魔して答えに窮してしまう。
変化しつつある男女間の役割に着目した高橋監督。主題として取り上げた理由として「不景気が続いているなか、女の人が必ず家にいて家事をやってもらう状況ではなくなってきています。とても頼りないですが、ぼくらも家事をやるので女の人も働いてください、というようになってきているんですね。そこでそのあたりをみんながどのように考えているのか知りたく、問題提起をしてみました」と説明した。
真奈美役を演じた田中結花さんは高橋監督の問題提起に対し、「いろいろな人が様々な事情を抱えて生きていると思うので、それぞれにとって幸せな形であれば良いのかなという思いはあります」と回答。劇中で描かれる夫婦が選択した結末への理解を示した。
真面目な姉という世間体と、肉欲に溺れる本当の自分との間に横たわるギャップに苦しむ女を描いたのは有馬達之介監督の『不肖の娘』。虚無感を肉体関係で埋めていく聡子は、父の病気が悪化したことで実家に戻ることに。しかし、実家では自由奔放な妹と、とぼけた母に振り回される毎日が続き、虚無感はつのるばかり。ある日、地下道で男に絡む姿を元恋人に見られてしまい……。
日本映画学校(現・日本映画大学)の卒業制作として作られた本作は、有馬監督の私的な思いが強くこめられている。「実は主人公の聡子にはモデルがいます。知り合いなんですが、必要以上に自分のことを嫌っているんですね。映画で世の中を変えようとか、人の考えを変えようとか、そんなつもりは全くありません。ただそのモデルの人から作り上げた聡子というキャラクターに寄り添ってあげたいなと。この子の問題を少しでも分かってあげたい、ただそれだけの思いで作りました」。
俳優の津田寛治がメガホンを撮った『カタラズのまちで』は、監督の実体験をもとにしたほろ苦いハートフルストーリーだ。小さな街に地元の人に愛される画家がいた。彼の画風に影響を与えたのは、中学生のときに出会ったホームレスだった。ホームレスとの友情や同級生への恋心、回避できない社会の仕組み、そして別れ。様々な経験を得て、少年は成長していく。
本作は台詞を一切廃した無言劇の形で物語が進んでいく。なぜ無言劇にする必要があったのか。残念ながら出席できなかった津田監督に代わって木川剛志プロデューサーが答えてくれた。「福井を舞台にした映画なんですが、監督の津田寛治も福井出身なんですね。津田さんは福井の人間に対して、何かについてしゃべったり、説明をするのが下手だというイメージを持っているんです。でも、そういったネガティブなイメージがある一方で、小さいころに見ていた大人の男は、言葉に出さずに態度や背中で物を語っていたと言います。こういったことを踏まえ『カタラズのまちで』というタイトルになりました」。
「短編(4)」は次回、18日(木)11:00から多目的ホールで上映される。