【デイリーニュース】 7月15日(月・祝)
vol.21 『ロマンス・ロード』まつむらしんご監督 Q&A
「とにかく生活感というのが僕の中では大事な要素なんです」
左からまつむらしんご監督、タマミ役の中村はるなさん、ジュノ役の太田順子さん
長編コンペティション部門に出品された『ロマンス・ロード』は、恋のツキに見放された女二人がパワースポットを巡るコメディだ。同じ男にもてあそばれたタマミとジュノは、偶然にも一緒にパワースポット巡りを行うことになる。道中、恋愛小説家の一ノ瀬と出会った二人は、新作のアイデアが浮かばないと嘆く彼を救うべく協力を決心。恋愛体質の女二人とスランプに陥った恋愛小説家の男。パワースポット巡りの果てにたどり着いた先にあったのは……。
Q&Aではまつむらしんご監督のほか、タマミ役の中村はるなさんと、ジュノ役の太田順子さんも登壇。製作のきっかけや現場の状況をはじめ、主演のふたりの関係性などに対する質問が飛び交い、活発なセッションとなった。
大学院の卒業制作として、まつむら監督が完成させた本作。大学院に入った目的として絶対に長編映画を1本撮ろうと決めていただけに渾身の1作となった。しかし、長編映画を撮るということは決めていたものの、内容を決定するまでには時間がかかったという。
「主人公が二人いるんですが、こういうのをバディ映画といいます。僕はバディ映画が大好きなので、まずはこの形式で行くことに決めました。次にどういった物語にしようかと考えた際に、特にアメリカ映画で顕著なのですが、低予算の長編映画に多いロードムービーに1回挑戦してみたいと思ったんです。バディの性別やロードムービーの行き先は後で決めていきました。長編であること、バディムービーであること、そしてロードムービーであること。この3つからスタートしました」。
本作の上映中、劇中で二人が行う絶妙な掛け合いに、会場では何度も笑い声があがった。おのずと気になるのは、それらが計算された演出なのか、もしくはアドリブなのかという点。その秘密に関して監督は、「脚本の台詞の間に『……』というのを多く書いていました。自分で台詞を言いながら書いているので、脚本の段階で間を意識していたと思います。実は脚本は6割くらいしか書かないんです。10割書いてしまうと力尽きてしまうし、1回作業が終わったみたいになってちょっとなえちゃうんですね。(脚本執筆が)作業になってしまうのが嫌なので、現場で二人を実際に見て考え、稽古をしながら付け足していくという感じでした」と丁寧に解説した。
劇中、タマミとジュノは食事をし、酒を飲み、寝るといったことを何度も繰り返す。二人がまとうヨレヨレの部屋着とあいまって非常にリアリティが感じられる場面だ。
「とにかく生活感というのが僕の中では大事な要素なんです。そのために生活で絶対に不可欠な生理的な要素、食べるとか、寝るとか、トイレに行くこと、そういうことをちゃんと描写していこうと思っています。ストーリーが先行してしまうと、そういった描写がおろそかになったり、省かれてしまう。この人たちがここで生活して生きていますということを意識すること。そこに注意を払っています」。
中村さんと太田さんはともに劇団東京乾電池に所属する俳優ということもあり、二人の関係性も注目された。中村さんが先輩にあたり2期ほど違う二人。それなりに仲は良かったものの、これまでがっちりと共演したことはなかったという。しかし、監督から太田さんが先に決まっていたことが明かされると、太田さんは「私が一方的にはるなさんのことを好きで、まつむらさんに熱望したところはありました。そのため、二人のシーンでは、『はるなさんっ!』って、なにか頼るような気持ちでやらせていただきました」とラブコールしていたことを暴露。そんな状況だったことを知らなかった中村さんは驚きつつ、「(ラブコールには)全然気が付かなかったんですけれど、とても可愛い後輩ですし、舞台で一度共演したこともあったので、大丈夫だと思っていました」とさらり。劇中を彷彿させる、二人のやり取りに会場には再び笑いが起こった。
『ロマンス・ロード』は次回、18日(木)14:30より多目的ホールで上映される。