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【デイリーニュース】 7月16日(火)
vol.25 『隠されていた写真』マチェイ・アダメク監督Q&A
瑞々しくも苦い青春の味……
「私自身の成長を映画にも反映させたかった」

マチェイ・アダメク監督

 


 東欧から長編コンペティション部門にノミネートされた『隠されていた写真』が日本での初上映を果たした。来日してティーチ・インに登壇したポーランド人のマチェイ・アダメク監督は落ち着いた語り口で穏便な物腰。繊細な作品のテイストを重視した監督の要望で、上映は通常よりも音量を絞ったコンディションでなされた。

 妊婦の母と見知らぬ男が並んで写っている昔の写真を見つけた17歳のアダムは、自分が両親の子ではないかもしれないという不安にかられ、自身のルーツを知るために一人で母親の実家を訪れる。祖母や町の人々との触れ合い、自らの想像を超えた過酷な真実、そして美しい少女との出会いとほのかな恋……映画は挫折と別れを経験したアダムの一夏を通してナイーブな少年時代の終わりを細やかに見つめる。

 最も苦労したのは主役のアダムを演じる少年を見つけることだったという。物語はほぼアダムの目線で進み、絶えずスクリーンに出ずっぱりのため、彼がどのような人間であるかが作品を左右する。「プロの俳優に実年齢より若いフリをして演じてもらうことはしたくなかった。新鮮で、感受性豊かで、繊細な印象を見る人に与えることが重要だったんだ。半年ほど学校を回ったりして探したけど、なかなかぴったりの子には出会えなかった。難しいことはわかっていたけど、あまりにもいないから絶望的になったよ(笑)」

 そして見つかったのが監督と同じ名前のマチェイ。しかもその方法たるや、古い映画を調べ、それらに出演している子どもたちが(当時)何歳だったかを計算して見つけ出したしたというから驚きだ。

  「彼が8~9歳のときの出演作を見たから、その頃にはちょうどシナリオ通りの年齢になっていたんだ。最初はもう二度と映画には出たくないと言われたんだけど、シナリオを読ませたら気に入ってカメラテストに応じてくれた。共演者はみんなポーランド映画界を代表する名優やスターばかりだから、マチェイにとってはストレスも大きかったと思うよ」

 撮影は晩夏に行われた。その季節のポーランドはかなり冷え込みが厳しい。水中に入るシーンでは俳優たちにひどく嫌がられたそうだが、作品世界の持つ雰囲気には適している。その空気感に、タデウシュ・コンヴィツキ監督の1958年のモノクロ映画『夏の最後の日』を連想したという日本の観客の意見が寄せられると、偶然にも先日ポーランドの観客から同じ反応があったばかりだと明かした。

 ハンディカメラを手にしたアダムが、最初のうちは風景や人間以外の対象ばかり撮る理由については、「私の人生観の投影なんだ」とアダメク監督。「映画大学に入るまで、人間には被写体としてまったく興味がなかった。物のほうが面白いと思っていたんだ。それからしばらくしてやっと人間の面白さに気づいた。人の表情や体の比類のなさにね。その意味で私自身が成長したことを、この映画にも反映させたかったんだ」

 アダムには様々な試練がふりかかるが、解決策は簡単には提示されない。大人への道はなかなかに厳しい。

 『隠されていた写真』は次回、20日(土)11:00より多目的ホールで上映される。

 

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