【デイリーニュース】 7月20日(土)
vol.30 過去ノミネート監督新作上映『リルウの冒険』Q&A
熊坂出監督「生と死が混在する沖縄は、この映画の夢と現実を描くのにふさわしい場所」
熊坂出監督
過去に本映画祭でコンペティション部門にノミネートされたクリエイターたちの新作を紹介する「過去ノミネート監督新作上映」。『おだやかな日常』(内田伸輝監督)と『THE FUTURE/ザ・フューチャー』(ミランダ・ジュライ監督)に続く3本目の作品は、2005年に『珈琲とミルク』が短編部門最優秀作品賞に輝いた熊坂出監督の『リルウの冒険』。
ギニア人の父親と日本人の母親を持つ小学5年生のリルウ。笑うことが苦手なリルウは、いつも笑っている同級生、こころが沈んだ顔をしているのに気づく。こころは夢日記をつけているのだが、ここ1週間ほど夢が見られないという。夢を取り戻そうとする2人。そんなある日、「夢を忘れないで」という言葉を残して、突然こころが消えた……。
友だちを探すリルウの冒険はやがて、沖縄と東京、夢と現実、生と死――さまざまな境界を超えて不思議な世界に迷い込んでしまう。沖縄を舞台にしたことについて、熊坂監督はこう話す。
「同じ日本ですが、沖縄は文化圏が違うんですね。大きなデパートの裏にお墓があったり、死が身近というか、生と死が混在している感じが面白い。この映画の夢と現実、バーチャルとリアルを描くのに相応しい場所だと感じました。もともと沖縄ありきの映画なんです。東京は生と死が断絶していている感じがして、その対比でもあります」。
リルウとこころを演じたジャバテ璃瑠さんと仲村渠さえらさんのやりとりや動作は、あまりに自然で、脚本もなく即興で自由に喋っているようにも見えるが、「まず台本ありき」だったと監督は言う。
「僕は関東で生まれ育ったので、沖縄弁に関してはわからないところがある。僕の書いた台詞を、2人に自分だったらどう言うか、まず書き起こしてもらいました。それから本人たちの体に染み込むまでひたすらリハーサルして、ああいう形になりました。こころ役のさえらは、実際には役と真逆のはっちゃけた子なんですよ、ダンスがうまくて」。
熊坂監督だけでなく、仲村渠さえらさんの今後の活躍も楽しみだ。
熊坂出監督は、『珈琲とミルク』でPFFアワード2005審査員特別賞を受賞、2007年の第17回PFFスカラシップ作品『パークアンドラブホテル』では、ベルリン国際映画祭で日本人初の最優秀新人作品賞を受賞している。本作は2012年、韓国のシネマ・デジタル・ソウル映画祭で最高賞を含む2冠を獲得した。